国民的歌手で女優のいしだあゆみさんが、3月11日午前4時48分、甲状腺機能低下症のため都内の病院で逝去されました。76歳でした。所属事務所が17日に発表し、日本中に悲しみが広がっています。葬儀は近親者のみで行われ、お別れの会は予定されていないとのことです。
天才歌手、そして名女優として輝かしい軌跡を辿る
いしだあゆみさんといえば、1968年にリリースされた「ブルー・ライト・ヨコハマ」の大ヒットが記憶に新しいでしょう。独特の鼻にかかった歌声と、抑揚を抑えた歌い方は唯一無二の魅力で、一世を風靡しました。NHK紅白歌合戦にも出場し、その歌声は多くの人の心を掴みました。
いしだあゆみさんインタビュー写真
女優としても幅広く活躍し、1964年のTBSドラマ「七人の孫」で一躍人気者に。その後も、「北の国から」(1981年)での悲哀に満ちた母親役や、「金曜日の妻たちへ」(1983年)での”サレ妻”役など、様々な役柄を体当たりで演じ、視聴者を魅了しました。NHK連続テレビ小説「てるてる家族」(2003年)では、自身の家族を題材にした物語に、自身をモデルとした役の先輩歌手役として出演し、大きな話題となりました。
映画界でも、「野獣刑事」(1982年)でのヌードシーンなど、果敢に挑戦を続けました。「火宅の人」、「時計 Adieu l’Hiver」(1986年)では、毎日映画コンクール女優主演賞を受賞するなど、その演技力は高く評価されました。
晩年はシンプルライフを実践、突然の訃報に関係者も悲痛
近年は、神奈川・鎌倉から東京への移動が負担になったことから、還暦前に東京の1LDKのマンションへ引っ越し、シンプルな生活を送っていたそうです。食器は皿一枚、コーヒーカップ一個だけ、という徹底した断捨離ぶりは、多くのメディアで取り上げられました。
いしだあゆみさんと萩原健一さんの婚約会見
今月に入り体調を崩し入院、最期は妹に見守られながら息を引き取ったとのことです。1971年には肝臓病で1年間闘病したこともありましたが、その後は大きな病気もなく、今回の訃報は関係者に大きな衝撃を与えています。脚本家の倉本聰氏は、「どんなタイプの役も演じられる本当の女優さん。あゆみちゃんの演技には常に僕の予想を裏切ってくれる新しさがありました」と、その才能を惜しんでいます。
いしだあゆみさんのプロフィール
本名:石田良子。1948年3月26日、大阪府吹田市生まれ。4人姉妹の次女で、長女は元フィギュアスケーターの石田治子さん、四女は歌手の石田ゆりさん。5歳からフィギュアスケートを始め、小学6年で全関西フィギュアスケート選手権大会ジュニアの部で優勝。中学2年の1961年には大阪・梅田コマ劇場で歌手デビュー。2021年には旭日小綬章を受章。
心よりご冥福をお祈りいたします
日本の芸能界に大きな足跡を残した、いしだあゆみさん。その歌声と演技は、これからも多くの人々の心に生き続けることでしょう。心よりご冥福をお祈りいたします。