硫黄島の星条旗写真、国防総省サイトから削除の波紋:DEI重視政策と歴史的記録の保存

米国の象徴ともいえる硫黄島の星条旗掲揚写真が、国防総省のウェブサイトから削除されたことが波紋を広げている。ワシントン・ポスト紙の報道によると、この措置は国防総省が進める多様性・公平性・包括性(DEI)重視政策の一環とされている。写真に写る海兵隊員の中にネイティブ・アメリカンが含まれていたことが、削除の理由とみられている。

DEI重視と歴史的記録のジレンマ

国防総省はDEI推進のため、ウェブサイト上の画像を見直し、特定の基準に合致しないものを削除しているようだ。しかし、今回の星条旗掲揚写真の削除は、歴史的記録の保存とDEI重視のバランスについて疑問を投げかけている。この写真は、太平洋戦争の激戦地、硫黄島における米軍の勝利を象徴する一枚であり、AP通信のカメラマンが撮影し、ピュリツァー賞も受賞した歴史的価値の高い写真だ。東京から南に約1250キロに位置する硫黄島では、1945年2月19日の米軍上陸から3月26日の陥落まで、熾烈な戦闘が繰り広げられた。この写真が持つ歴史的意義を軽視することはできないだろう。

altalt硫黄島の摺鉢山で星条旗を掲げる米海兵隊員たち。1945年2月撮影。(AP通信)

原爆投下機の削除候補指定も

国防総省による歴史的写真の削除は、今回が初めてではない。以前には、広島に原爆を投下したB29爆撃機「エノラ・ゲイ」も削除候補に指定されたことが報じられている。その理由は、機体名が「ゲイ」という単語を含んでいるため、LGBTQ+コミュニティへの配慮が欠けていると判断された可能性があるとされている。これもまた、歴史的記録の保存とDEI重視の両立の難しさを示す事例と言える。

専門家の見解

軍事史研究家の佐藤健太郎氏(仮名)は、「歴史的写真は、当時の時代背景や社会状況を理解するための重要な資料です。DEI推進は重要な課題ですが、歴史的事実を歪曲したり、隠蔽したりすることはあってはなりません。多様な視点を取り入れつつ、歴史的記録を適切に保存していく方法を模索する必要があるでしょう」と指摘する。

DEI政策の見直しと今後の課題

現在、国防総省はDEI重視政策の見直しを進めているとされている。今回の星条旗掲揚写真の削除は、その見直しを促す契機となるかもしれない。歴史的記録の保存とDEI推進のバランスをどのように取っていくのか、今後の国防総省の対応が注目される。

歴史を学ぶ上で、多様な視点を持つことは重要だ。しかし、特定の価値観に基づいて歴史的事実を改変することは許されない。過去の出来事を正確に理解し、未来への教訓とするためにも、歴史的記録の適切な保存と公開が求められる。