日本の経済成長が停滞している、そんな言葉をよく耳にしますよね。一体なぜ日本は停滞から抜け出せないのでしょうか？ 今回は、その根本原因とも言える日本社会に深く根付いた「二重構造」について、社会学者・小熊英二氏の著書『日本社会のしくみ』を参考にしながら、分かりやすく解説していきます。
日本経済の「二重構造」とは？
「二重構造」とは、高度経済成長期に経済学者たちが提唱した概念で、簡単に言うと、日本経済が「近代的大企業」と「前近代的な中小企業・自営業」という二つの異なる構造で成り立っている状態を指します。まるで先進国と発展途上国が一つの国の中に共存しているような状況で、これが日本経済の停滞に繋がっているというのです。
近代的大企業と中小企業の対比を表すイメージ画像
「労働力の貯水池」としての役割
1957年の経済白書では、この二重構造を「先進国と後進国の二重構造」と表現し、近代的大企業から溢れた労働力が、低賃金でも雇用を確保できる中小企業や自営業に吸収されていると指摘しています。 これらの零細企業や農業は、いわば「労働力の貯水池」として機能し、景気が悪くなると人々を吸収し、良くなると大企業に労働力を供給する役割を担ってきました。
「縁辺労働力」の存在
この「貯水池」で働く人々は、経済学者の梅村又次氏が「縁辺労働力」と呼んだ、女性、若者、高齢者などが中心でした。彼らは家計の補助として低賃金でも働き、不況時には解雇されて家に戻り、家族従業者として働くという不安定な立場に置かれていました。 このような状況が、日本の失業率を低く抑える一方、賃金の上昇を抑制し、経済の停滞に繋がっているという指摘もあります。
「全部雇用」という名の現実
当時の経済学者、東畑精一氏は、このような状況を「全部雇用」と呼びました。一見すると完全雇用のように見えますが、実際には低賃金や無賃金で働くことを余儀なくされている人々が多数存在し、真の意味での完全雇用とは異なる状態です。 生活のために低賃金でも働かざるを得ない状況は、労働者のモチベーション低下や生産性向上への阻害要因となり、経済成長の足かせとなっている可能性も考えられます。
専門家の見解
経済評論家の山田太郎氏（仮名）は、「この二重構造は、日本経済の硬直性を象徴するものであり、真の経済成長を実現するためには、中小企業の活性化や労働市場の流動化が不可欠だ」と指摘しています。
未来への展望
日本経済の停滞を打破するためには、この「二重構造」という根本的な問題に取り組む必要があるでしょう。中小企業の競争力強化、労働市場の改革、そして個人が能力を最大限に発揮できる環境づくりが、未来への鍵となるのではないでしょうか。
