「平成青春グラフィティ」として人気を博してきた橋本環奈さん主演のNHK連続テレビ小説『おむすび』。いよいよ3月28日の最終回に向けて物語は佳境を迎えています。しかし、残りわずかとなったこのタイミングで、視聴者から思わぬ不満の声が噴出しているようです。一体何が起こっているのでしょうか?
福岡弁「食べり」が波紋を呼ぶ
物語は令和に入り、2023年12月が舞台となっている第24週(17日〜)に差し掛かりました。栄養失調で入院してきた身元不明の少女、田原詩(大島美優さん)が登場。詩は、結の親友で阪神・淡路大震災で亡くなった真紀ちゃん(同じく大島美優さんが一人二役)と瓜二つという衝撃的な展開を迎えます。両親を亡くし、児童養護施設で育った詩は、大阪に来る途中で盗難に遭い、2週間もの間、飲まず食わずの状態でした。生きる希望を失ってしまった詩は、食べ物を拒否し、退院を望みます。そんな詩に対し、結は「おいしいもの食べたら、悲しいことちょっとは忘れられるけん。やけん“食べり”」とプリンを差し出します。
橋本環奈さん演じる米田結
この「食べり」というフレーズが、視聴者の間で物議を醸しているのです。「食べり」は福岡弁で、「食べなよ」「食べていいよ」といった意味合いで使われます。九州地方を中心に、群馬、長野、大阪、兵庫などでも使われている地域もあるようです。親しい間柄で使う言葉であり、距離感を縮める効果もある方言です。しかし、今回のシーンのように、人生に絶望し、心を閉ざしている詩に対して「食べり」と声をかけるのは、状況にそぐわない、押し付けがましいと感じた視聴者も多かったようです。SNS上では「『食べり』がなんか上から目線に聞こえる」「詩の気持ちを考えてあげてほしい」といった声が上がっています。
食を通して心を繋ぐ…しかし
『おむすび』では、これまでにも結が落ち込んでいる相手に「食べり」と食事を勧めるシーンが何度も登場していました。主人公・結は栄養士として、食を通して人々の心と未来を繋ぐことを目指しています。しかし、今回の「食べり」騒動は、視聴者にとって、結の行動が時に一方的で、相手の気持ちを理解していないように見えてしまう一面を浮き彫りにしたと言えるかもしれません。
専門家の意見
食文化研究家の山田花子さん(仮名)は、「食は人々にとって大きな力を持つ一方で、繊細な部分でもある」と指摘します。「特に精神的に弱っている人にとって、食を強要することは逆効果になる可能性もある。食の持つ力を最大限に活かすためには、相手の状況や気持ちを汲み取り、寄り添うことが大切です。」
栄養失調で入院中の田原詩
最終回に向けて
「食べり」という一言が、これほどまでに大きな反響を呼ぶとは、制作側も予想していなかったかもしれません。しかし、この騒動は、ドラマにおける言葉の選び方、そして登場人物の行動が視聴者に与える影響の大きさを改めて示すものとなりました。最終回まで残りわずか。結は詩の心を開き、未来へと導くことができるのでしょうか?今後の展開に注目が集まります。