ジャーナリスト田原総一朗氏(91)による過激な発言が、放送業界に大きな波紋を広げている。自身のレギュラー討論番組『激論!クロスファイア』(BS朝日)での一幕が発端となり、番組は打ち切り、関係者は懲戒処分となる事態に発展。しかし、その裏側で番組制作側の「意図的な編集怠慢」を巡る新たな疑惑が浮上し、SNSを中心にさらなる議論を呼んでいる。今回の騒動は、メディアにおける言論の自由と責任、そして情報発信のあり方に深く問いかけるものとなっている。
物議を醸した発言の経緯と番組への批判
事の発端は、2023年10月19日に放送された『激論!クロスファイア』。この回には自民党の片山さつき氏、立憲民主党の辻元清美氏、社民党の福島瑞穂氏が出演し、選択的夫婦別姓の導入について議論が交わされていた。その中で、当時の自民党総裁であった高市早苗氏が夫婦別姓に否定的な立場であることが話題に上ると、田原氏は「じゃあ、高市に大反対すればいいんだよ。あんな奴は死んでしまえと言えばいい」と、極めて挑発的な発言を行った。この過激な言葉に対し、辻元氏が「田原さん、そんな発言して、高市さんと揉めてたでしょ、前も」とたしなめる場面もあったが、田原氏は「僕は高市と激しくやり合った」と主張し、そのままCMへと移行した。
放送後、田原氏のこの「暴言」には当然ながら批判が殺到。さらに、収録形式の番組であるにもかかわらず、不適切な発言が編集でカットされずに放送されたことに対し、BS朝日に対しても非難の声が集中した。
BS朝日による対応と番組終了の決定
批判を受けて、BS朝日は迅速な対応を見せた。まず10月21日には田原氏を厳重注意したことを公表。そして24日には、定例取締役会に加え、臨時取締役会を開催したことを発表し、『激論!クロスファイア』の番組終了を決定した。同局は声明で、「田原氏の発言は政治討論番組としてのモラルを逸脱していると判断し、当該放送回をもって番組を終了することを決定いたしました」と説明。また、収録番組でありながら不適切発言を編集でカットしなかった番組責任者ならびに管理監督者である編成制作局長を懲戒処分としたことも明らかにした。一方で、田原氏が司会を務める別の番組『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)については、降板や番組終了の予定はないとされた。
ジャーナリスト田原総一朗氏の物議を醸した発言により番組が終了したBS朝日「激論!クロスファイア」
田原氏の謝罪とSNSでの新たな疑惑
騒動を受け、田原氏自身も自身のX(旧Twitter)を複数回更新し、一連の出来事について謝罪の意を表明した。しかし、問題はこれで終わりではなかった。10月25日頃から、SNS上で新たな情報が拡散され始めたのである。それは、田原氏の娘のものと見られるFacebookの投稿を起点としたもので、「田原氏の事務所は例の『死んでしまえ』発言についてすぐにまずいと感じ、収録後何度もカットを要求していたが、プロデューサー陣がまともに取り合ってくれなかった」という内容だった。
このFacebook投稿自体はすでに削除されているものの、その内容がSNSで広く拡散されたことで、議論は再燃。今度は「なぜBS朝日側は意図的にカットしなかったのか」という疑問が噴出し、「事前収録なら編集出来たろうにしなかったのは、敢えて俎上に上げて批判してもらいたかったのか」「さすがに、収録なんだったら、悪意がありますね。田原総一朗を業界から追放したいのかもですね」といった、番組制作側の「悪意」や「陰謀論」にまで発展する憶測が飛び交う事態となっている。この騒動は、一ジャーナリストの発言問題にとどまらず、テレビ局の編集権や番組制作の舞台裏、さらにはSNS時代の情報伝播の特性と、それによって生じる社会の反応を浮き彫りにしている。





