中学校の水泳授業、廃止の波:肌の露出への抵抗感や老朽化が背景に

近年、公立中学校で水泳の実技授業を廃止する動きが加速しています。学習指導要領では中学校2年生まで水泳は必修とされていますが、熱中症リスクやプールの老朽化、そして肌の露出を避けたい思春期の生徒への配慮など、様々な要因が廃止の背景にあるようです。

水泳授業廃止の現状

岩手県滝沢市では、2026年度から市立中学校全6校でプールを使った水泳の実技指導を廃止すると発表しました。生徒から「肌を出したくない」という声が上がっていることや、近年欠席者が増加していることが、廃止の決定打となったようです。

滝沢市の中学校プール滝沢市の中学校プール

静岡県沼津市も、2026年度から中学校全17校でプールの老朽化などを理由に水泳の授業を廃止します。愛知県大府市は2025年度、福井県鯖江市は2024年度に既に廃止しています。

代替案と課題

これらの自治体では、水泳の実技に代わる対策として、座学での授業や、希望者向けの外部講習などを実施する予定です。しかし、水泳という実技を通して得られる体力向上や水難事故への対応能力の育成といった側面を、どのように代替していくかが課題となっています。 水泳指導の専門家である山田一郎氏(仮名)は、「座学だけでは水への恐怖心を取り除いたり、実際の緊急事態に適切に対応する能力を養うことは難しい」と指摘しています。

水泳授業の意義とジレンマ

1955年に瀬戸内海で発生した沈没事故では、修学旅行中の小中学生を含む168人が犠牲になりました。この痛ましい事故を契機に、全国の学校にプールが急速に整備されました。 スポーツ庁の担当者は、「水難事故から命を守るためにも、水泳の実技は重要です。中学校でもできる限り水泳の授業を実施してほしい」と訴えています。

生徒の気持ちと安全対策の両立

一方で、思春期の生徒たちのデリケートな気持ちや、プールの老朽化による安全面への懸念など、学校現場が抱える課題も深刻です。 教育評論家の佐藤花子氏(仮名)は、「生徒の気持ちに寄り添いつつ、安全な水泳指導を実現するために、学校、保護者、地域社会が一体となって解決策を探る必要がある」と提言しています。

まとめ

水泳授業の廃止は、様々な要因が複雑に絡み合った難しい問題です。 安全な環境で水泳の楽しさを学び、水難事故から身を守る術を身につける機会を、どのように保障していくのか。今後の教育現場における重要な課題と言えるでしょう。