韓国の名門大学進学事情:ソウル大学合格者数という呪縛からの脱却

韓国では長らく、ソウル大学への合格者数が高校の prestigio(名声)を測る絶対的な指標とされてきました。この記事では、その歴史的背景から変化の兆し、そして未来への展望まで、韓国の教育を取り巻く現状を分かりやすく解説します。

ソウル大学合格者数:栄光と影の歴史

かつて、京畿高校、ソウル高校、慶北高校といった名門校がソウル大学合格者数ランキングの上位を独占していました。1976年には、ソウル大学新入生の約3人に1人がこの3校の出身者だったというから驚きです。各高校は合格者数増加に躍起になり、時には生徒に合格しやすい学部への進学を強要することもあったといいます。教育評論家のパク・スンチョル氏(仮名)は、「当時の過熱ぶりは異常だった。まるでソウル大学合格者数を競う競争ゲームのようだった」と振り返ります。

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高校平準化政策の導入により、地方の高校が台頭する時期もありましたが、それも長くは続きませんでした。その後、外国語高校や科学高校といった特殊目的高校、そして自律型私立高校が新たな名門校としてランキング上位に名を連ねるようになりました。地方の伝統校からはソウル大学合格者ゼロという事態も発生し、OB・OGによる募金活動が行われたというエピソードからも、ソウル大学合格者数への執着が伺えます。

医学部ブームと変化の兆し

1997年の通貨危機以降、医学部人気が過熱し、ソウル大学よりも医学部・歯学部を優先する受験生が増加しました。また、浪人生の合格者数増加も、高校の実力を正確に反映していないという指摘もあります。2025年度のソウル大学定時募集では、浪人生の割合が60%に達しているというデータも出ています。このような状況下で、ソウル大学合格者数という指標の妥当性に対する疑問の声が高まってきました。

ソウル大学の情報非公開:新たな一歩、そして課題

こうした流れを受け、ソウル大学は2025年度入試から、新入生の出身高校と地域を公開しないという決断を下しました。高校間の過度な競争や、私教育市場、不動産市場への影響を軽減するのが狙いです。「高校は教育の場であり、入試実績を競う予備校ではない」という原点回帰の姿勢も背景にあると考えられます。

しかし、有名大学への進学熱が冷める気配はなく、情報非公開によって、かえって情報力に長けた私教育業者の影響力が強まる可能性も懸念されています。料理研究家のイ・ヨンジャ氏(仮名)は、「情報公開の是非は難しい問題。透明性を保ちつつ、過熱を抑える方法を探る必要がある」と指摘します。

未来への展望:適性重視の進路選択を

教育先進国では、大学ごとに優れた学科が異なり、学生は自分の適性に合わせて大学・学科を選択します。韓国でも、特定の大学への合格者数ではなく、個々の適性に基づいた進路選択が重視されるようになれば、教育を取り巻く環境は大きく変わっていくでしょう。

この記事を通して、韓国の大学入試を取り巻く現状と、その変化への期待を少しでも理解していただけたら幸いです。皆さんの周りの教育事情はどうでしょうか?ぜひ、ご意見や感想をお聞かせください。また、jp24h.comでは、様々な社会問題に関する情報を発信しています。他の記事もぜひご覧ください。