「前の顧問の先生は面倒見がよかったのに今年は…」、保護者のクレームが激減する?新年度に「校長が保護者に伝えるべき」3つの話


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今は卒業式の時期だけれど、4月に入ると、人事異動に対応したり、新入生を迎えたりと、学校は1年のうちで最も慌ただしくなる。そんなときだからこそ、少しでいいので準備してほしいことがある。入学式の後、保護者に何を、どう伝えるかについてだ。

保護者に伝えられるチャンスはめったにない

たしかにこうした内容も大事だと思うが、肝心のことが抜けてはいないだろうか。今回は次の3点を、校長から保護者に伝えることを提案したい。

(1) 子どもの安全はもちろん、教職員の健康を守ることの意味
(2) ここまでは学校はできるが、これ以上はできないという線引き
(3) お互いに率直に、オープンに話し合っていきたいこと 

というのも、この機会を逃すと、大勢の保護者に説明できる機会などほとんどない。授業参観の後の学級懇談会は、PTAの役員決めなどもあって欠席する人も多いし、そもそも仕事などで来られない保護者もいる。学校便り、校長通信などを出しても、読まない人は読まない。入学式の後は最大のチャンスなのだ。

(1) 子どもの安全はもちろん、教職員の健康を守ることの意味

そういう遠慮があってか、入学式の後に、勤務実態や働き方改革についての話をしている校長は、それほど多くはないようだ。

「はたして、そんなこと言っている場合だろうか?」と私は思う。学校は、保護者のことを気にしすぎ、忖度しすぎではないだろうか。これまで何かとクレームや理不尽な要求に悩まされてきた方も多いだろうから、そういう気持ちになるのもわかるが。

学校が忙しすぎることは、ほとんどの保護者が報道などで聞いている。しかし、自分の学校がどのくらいかは知らない。教職員の正規の勤務時間が何時何分から何時何分までかを知っている人もおそらくごく少数だろう。

そもそも、子どもの在校時間(登校時間から下校時間まで)が、教職員の勤務時間を無視しているという問題もある。校長は、自校の勤務実態を伝えるとともに、休職・離職が増えると教員不足もあって大変なことなどを、率直に保護者に話したほうがよいと思う。

私が講演などをするときに、保護者にも、教職員にもかなり驚かれるデータがある。それは、公立小学校教諭の約4割が深刻な寝不足、不眠症と疑われるとの調査結果だ※1。

先生が寝不足で、いい授業ができるだろうか? 子どもたちの声にじっくり耳を傾けられるだろうか? また、教職員を対象とした研究ではないが、睡眠の質の低下は、上司の攻撃性の高さと関連するというメタ分析もある※2。つまり、睡眠不足だと、人はイライラしやすくなったり、怒りっぽくなったりする。教職員の場合、ともすれば閉鎖的な教室空間で、イライラしがちな先生を増やして、いいことはない。不適切指導の温床になりかねない。

こうした話をすると、ほとんどの保護者が、教職員の働き方と健康確保は他人事ではなく、わが子に影響しかねない問題であることに気づく。つまり、働き方を見直すことは、先生たちだけのためでもないし、学校都合を押し付けることでもない。子どもたちのためにも、今の状況はマズイということを共有することが大切だ。

校長先生は入学式の後でこう述べてほしい。「子どもたちの安全を守ることはもちろんですが、教職員の命、健康を守ることも、私の大切な仕事です」と。

※1 堀大介ほか「公立小学校教員の不眠症に関する業務時間分析」、『厚生の指標』第68巻第6号2021年6月。
※2 M.M. Van Veen, M. Lancel, E. Beijer et al. The association of sleep quality and aggression. Sleep Medicine Reviews 59 (2021)



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