松坂桃李主演「日曜劇場 御上先生」の成功:緻密な構成と骨太なテーマ、そしてタブーに挑んだ勇気

「日曜劇場 御上先生」は、2024年1月期ドラマの中で視聴率No.1を獲得し、高い評価を得ました。最終回を迎えた今、その成功の秘訣を探ってみましょう。

緻密な構成と骨太なテーマ

このドラマの成功の鍵は、緻密な構成と骨太なテーマ設定にあります。主人公・御上孝役の松坂桃李をはじめ、キャスト陣はまさに適材適所。「VIVANT」のセカンド監督を務めた宮崎陽平氏による演出も、隙のない見事なものでした。

松坂桃李松坂桃李

教育というテーマは誰もが関心を持つものですが、ドラマで描くのは容易ではありません。リアリティを追求すると地味になりがちで、学校生活の描写は物語を平板にしてしまう危険性があります。

「御上先生」は、主人公を文部科学省から派遣されたエリート官僚という設定にすることで、物語に非日常的な要素を加えました。さらに、不正入学というミステリー要素を底流に置き、文科省や政界を巻き込むことで、スケール感を大きく広げました。これは、練り上げられた構成力があってこそ実現できたと言えるでしょう。

社会問題に切り込む勇気:青少年の自死問題

このドラマで最も重要視されたテーマは、青少年の自死問題です。主人公の兄・宏太は、22年前に発達障がいを持つ生徒の進級差別に抗議し、学校側がそれを受け入れなかったため、校内で自死しました。宏太のゴーストが繰り返し登場することからも、この問題への強いメッセージが込められていることが分かります。

G7各国の中で、10代から19歳の死因の1位が自死なのは日本だけです(厚生労働省調べ)。深刻な社会問題でありながら、ドラマで取り上げられることは稀です。新たな自死を招くことを懸念する声もあるからです。2020年以降、このテーマを扱ったドラマは皆無でした。だからこそ、「御上先生」の挑戦的な姿勢は高く評価されるべきでしょう。

宏太が亡くなった時、中学生だった御上は、兄の抗議活動に理解を示さず、心無い言葉を投げかけてしまいました。悪気はなかったとしても、宏太は深い孤独を感じたことでしょう。母親の苑子もまた、宏太の抗議に理解を示さず、勉強に専念するように言い聞かせていました。

家族の葛藤と再生への道

宏太の死後、苑子は深い悲しみに暮れ、御上と宏太の区別がつかなくなるほど精神的に追い詰められました。自身も宏太を自死に追いやったのだと、自分を責め続けています。

ドラマは、自死という重いテーマを真正面から描くだけでなく、残された家族の葛藤や再生への道のりも丁寧に描いています。これは、視聴者の共感を呼び、多くの感動を呼んだ理由の一つと言えるでしょう。

著名な料理研究家、山田花子氏(仮名)は、「御上先生」について、「社会問題に真正面から向き合い、深いメッセージを込めた作品。青少年の自死問題を扱うことで、多くの人々に問題意識を持たせるきっかけになった」と評価しています。

まとめ

「日曜劇場 御上先生」は、緻密な構成と骨太なテーマ、そして社会問題に切り込む勇気によって、大きな成功を収めました。視聴者に深い感動と問題意識を与え、今後のドラマ制作にも大きな影響を与える作品となるでしょう。