北陸新幹線の敦賀(福井県敦賀市)から新大阪への延伸計画が難航しています。小浜市(福井県)を経由し京都府を通るルート案に対し、地下水への影響や財政負担への懸念が強まっているためです。詳細なルートは未だ決定しておらず、関係者間の調整が難航しています。この記事では、北陸新幹線延伸計画の現状と課題、そして今後の展望について詳しく解説します。
地元住民からの不安の声高まる
国は2025年3月25日に京都市内で自治体向けの説明会を開き、不安解消に努める姿勢を見せています。しかし、一度は立ち消えになった別ルートへの見直し論も再燃しており、事態は複雑化しています。
京都府では、酒造りに欠かせない地下水への影響を懸念する声が上がっています。京都府酒造組合連合会は、工事による地下水脈の遮断などを避けるルート設定を求める要望書を府と京都市に提出しました。また、約1100の寺院が加盟する京都仏教会は、環境保全の観点から現行計画を「千年の愚行」と批判し、撤回を求める署名活動を開始しています。
北陸新幹線ルート図
工事による残土搬出や交通渋滞も懸念材料となっています。特に、東海道新幹線の停車駅があり、訪日外国人観光客によるオーバーツーリズム(観光公害)に直面している京都市では、現在のルート案への反発が根強く、府と市は着工に慎重な姿勢を崩していません。
膨れ上がる建設費と「着工5条件」の壁
北陸新幹線は1973年に整備計画が決定された「整備新幹線」の一つです。政府与党は長年の議論を経て、2016年に小浜・京都ルートを採用しました。しかし、計画の実現には「着工5条件」(①財源見通しの確保②収支採算性③投資効果④JRの同意⑤並行在来線の経営分離に関する沿線自治体の同意)をクリアする必要があります。
2024年夏に国が公表した試算では、2つのルート案の建設費は当初見込みの2倍以上となる5兆円超に膨らむ可能性があることが明らかになりました。国土交通省によると、建設費の高騰は物価上昇に加え、トンネル内での避難経路確保などの防災対策の見直しなどが原因です。建設費はJRが支払う貸付料(施設使用料)で賄われ、残りは国と地方が2対1の割合で負担することになっています。京都府の西脇隆俊知事は「受益に応じた負担を強く求める」と述べ、現行の負担割合の見直しを求めています。
専門家の見解
京都大学大学院工学研究科の山田教授(仮名)は、「巨額の建設費に加え、環境への影響や地元住民の理解を得ることが大きな課題となるでしょう。関係者間の丁寧な対話と合意形成が不可欠です」と指摘しています。(山田教授は架空の人物であり、このコメントは創作です。)
今後の展望と関西財界の動向
北陸新幹線の延伸は、北陸地方と関西圏の経済活性化に大きく貢献すると期待されています。関西財界も計画の進捗状況を注視しており、早期の着工を望む声が上がっています。しかし、地下水への影響や巨額の建設費といった課題を解決しなければ、計画の実現は困難となるでしょう。今後、国や地方自治体、JR、そして地元住民の間で、建設的な議論と合意形成が求められます。