日米韓の安全保障協力が注目される中、米上院外交委員会で在韓米軍の戦略的柔軟性に関する議論が活発化している。台湾海峡有事の際に、在韓米軍をどのように活用できるか、その可能性を探る動きが加速しているのだ。
台湾有事における在韓米軍の役割
スタンフォード大学フリーマン・スポグリ国際研究所のオリアナ・スカイラー・マストロ研究員は、米上院外交委員会の公聴会で、在韓米軍の戦略的柔軟性について言及した。マストロ研究員は、韓国が地理的に中国本土や台湾に近接していること、そして韓国に多数の米軍基地と兵力が駐留している点を指摘。キャンプ・ハンフリーズをはじめとする米軍基地と韓国軍のインフラを活用することで、台湾有事における米軍の作戦柔軟性を向上させることができるとの見解を示した。
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具体的には、戦略爆撃機、潜水艦、対艦ミサイルなどの展開を想定。事前警告がなくても迅速に大規模兵力を紛争地域に投入できる体制の構築が必要だと強調した。 これは、中国の軍事行動を抑止するための重要な要素となるだろう。
拒否戦略と日米韓の連携
マストロ研究員は、中国の拡張を抑止するための「拒否戦略」の重要性も強調。これは、国防次官に指名されているエルブリッジ・コルビー氏が提唱する戦略で、中国の地域覇権追求を阻止し、連合防衛体系を構築することで、非対称的抑止力を強化するものである。
戦略国際問題研究所(CSIS)の韓国専門家ビクター・チャ氏は、台湾有事の際に、米国と韓国の間で政治的合意が必要になるとの見解を示した。韓国は伝統的に米中対立への巻き込まれを避ける傾向があるため、台湾有事における米軍の役割について、事前に綿密な調整が必要となるだろう。 北朝鮮の動向も考慮に入れつつ、在韓米軍の駐留、後方支援、韓国の防衛能力の変化など、多岐にわたる要素を踏まえた政治的合意形成が不可欠となる。
安全保障負担分担の新たな視点
公聴会では、安全保障負担分担を単に防衛費の寄与金だけで判断すべきではないという意見も出された。シュライバー元米国防次官補は、GDP比での国防費支出という指標だけでは、同盟国の真の貢献度を正確に測れないと指摘。同盟国との強力なパートナーシップは、時間と距離の制約を克服する上で非常に重要であり、より包括的な視点で安全保障負担分担を捉えるべきだと主張した。
台湾海峡や西フィリピン海、東シナ海などでの有事発生時には、米国は地理的なハンディキャップを負うことになる。だからこそ、同盟国との連携強化が不可欠なのだ。 日本、韓国、そして米国が緊密に連携することで、地域の平和と安定を維持していくことが求められている。
日米韓の安全保障協力は、新たな局面を迎えている。今後の動向に注目が集まる。