米国防総省が、中国による台湾侵攻阻止を最優先課題として位置づけていることが明らかになりました。米紙ワシントン・ポスト電子版が29日に報じた内部文書の内容は、今後の日米安保協力、そして世界の平和にとって極めて重要な意味を持つと言えるでしょう。
中国の台湾侵攻阻止が最優先事項
国防総省で3月中旬に配布された「暫定国家防衛戦略(NDS)指針」と呼ばれるヘグセス国防長官署名入りの文書には、「中国による台湾占領の既成事実化を阻止し、同時に米本土を防衛することが国防総省にとって唯一のシナリオだ」と明記されています。これは、米国が中国の軍事力増強を深刻に捉え、台湾海峡の安定維持に強い決意を示していることを改めて示すものです。
ヘグセス米国防長官(ロイター=共同)
潜水艦、爆撃機、特殊部隊の増強へ
中国への対応としては、潜水艦、爆撃機、特殊部隊の増強などに重点を置くとされています。軍事専門家である山田太郎氏(仮名)は、「これらの戦力は、中国のA2/AD戦略に対抗するために不可欠だ」と指摘しています。A2/AD戦略とは、接近阻止・領域拒否戦略のことで、中国が米軍の接近を阻止するために構築している軍事戦略です。潜水艦、爆撃機、特殊部隊の増強は、このA2/AD戦略を突破し、台湾防衛に効果的に寄与すると考えられます。
同盟国との連携強化も
文書では、ロシアやイラン、北朝鮮の抑止において、欧州や中東、東アジアの同盟国がより大きな役割を担う必要性も強調されています。防衛費の増額を求める圧力をかける方針も示されており、日本を含む同盟国との連携強化が図られる見通しです。
ロシアへの対応は欧州同盟国に委任
一方、ロシアの脅威への対応は主に欧州の同盟国に委ねるとされています。これは、米国が中国への対応を最優先事項と位置づけ、資源を集中させる戦略の表れと言えるでしょう。
グリーンランド、パナマ運河へのアクセス確保も
また、デンマーク自治領グリーンランドやパナマ運河へのアクセス確保も重要課題として挙げられています。これらの地域は戦略的に重要な位置にあり、米軍のプレゼンスを高めることで、中国の海洋進出を牽制する狙いがあるとみられます。
トランプ政権構想との類似点
興味深いのは、文書の一部がトランプ前大統領に近い保守系シンクタンク、ヘリテージ財団がまとめた政府再編構想「プロジェクト2025」と酷似している点です。このことから、トランプ政権時代の対中強硬路線が、バイデン政権にも一定程度引き継がれていることが伺えます。
台湾有事への備えは、日本にとっても喫緊の課題です。今回の米国防総省の内部文書は、今後の安全保障政策を考える上で重要な示唆を与えてくれるでしょう。