関東大震災と向き合う舞台「痕、婚、」:温泉ドラゴンが描く虐殺の記憶と現代への警鐘

100年前の関東大震災。未曾有の大災害の中で、数千人の朝鮮人が虐殺されたという暗い歴史があります。劇団温泉ドラゴンによる舞台「痕、婚、」は、この痛ましい史実を真正面から捉え、現代社会に鋭い問いを投げかける作品です。東京・中野の小劇場で上演された本作は、観客の心に深く刻まれる体験を提供しています。

隠された真実と向き合う

物語の主人公は、パク・キョンエという朝鮮人女性。彼女は自身の出自を隠し、木下麻子として東京の洋服店で働いています。日本人社会に溶け込み、結婚も約束された麻子でしたが、関東大震災で恋人を失っていたという残酷な真実が明らかになります。

altalt

震災時、デマに扇動された自警団や軍、警察による朝鮮人虐殺。麻子の恋人ヨンテクもその犠牲者の一人でした。「国を守るためだった」と正当化し、真実から目を背ける日本人たち。麻子は彼らに、ヨンテクを殺した事実を認めてほしいと訴えます。

過去の傷跡と現代社会の繋がり

観客は、麻子の苦悩を通して、加害者である日本人の心理、そして歴史の隠蔽という問題に直面します。劇場に響く麻子の悲痛な叫びは、100年前の悲劇を鮮明に蘇らせ、現代社会に生きる私たちにも深い共感を呼び起こします。

altalt

演出を担当したシライケイタ氏は、過去にも「ある王妃の死」「烈々と燃え散りし あの花かんざしよ」「星をかすめる風」など、歴史をテーマにした作品を手がけてきました。「痕、婚、」は、人間の残虐性、そして差別意識の根深さを問う作品だと語っています。

繰り返される歴史から学ぶ

脚本を担当した原田ゆう氏は、20年前にも関東大震災の朝鮮人虐殺をテーマにした作品を上演した経験を持ちます。彼女は、歴史から学び、差別や対立を生み出すメカニズムを理解することの重要性を訴えます。

altalt

「痕、婚、」は、単なる歴史劇ではありません。過去と現在を繋ぎ、現代社会における差別問題に警鐘を鳴らす作品です。私たち一人ひとりが歴史と向き合い、未来への教訓としていく必要があるのではないでしょうか。