人体と腸内細菌の驚くべき共生関係:40兆個の細胞と細菌の物語

私たちの体は、約40兆個もの細胞から成り立っています。しかし、実は体内にそれと同等の数の住人がいることをご存知でしょうか? それは、私たちの腸内に棲む腸内細菌です。本記事では、更科功氏の著書『若い読者に贈る美しい生物学講義』を参考に、人体と腸内細菌の驚くべき共生関係について分かりやすく解説します。

ダーウィンも驚く?自然淘汰が作り出す驚異

ダーウィンの進化論で有名な「自然淘汰」は、キリンの首やハヤブサの翼といった生物の進化に大きく関わっています。しかし、自然淘汰の影響は生物の体だけにとどまりません。例えば、クモの巣も自然淘汰によって進化してきた産物の一つです。初期のクモの巣は簡素な構造でしたが、自然淘汰を通して、獲物を効率的に捕らえるための洗練された構造へと進化しました。

クモの巣クモの巣

腸内細菌:40兆個の頼もしい仲間たち

驚くべきことに、人間の腸内には、体の細胞数とほぼ同等の、約40兆個もの腸内細菌が生息しています。以前は10倍以上とも推測されていましたが、近年の研究で細胞数と同程度であることが明らかになりました。それでも、膨大な数であることに変わりはありません。

私たちは腸内細菌に快適な住処と栄養を提供し、彼らはその見返りとして私たちの消化を助け、病原体から体を守ってくれます。例えば、人間はセルロースを消化できませんが、腸内細菌の力を借りることで消化が可能になります。私たちは約20種類の消化酵素しか作れませんが、腸内細菌は約1万種類もの消化酵素を作り出せるのです。

腸内細菌のイメージ腸内細菌のイメージ

腸内細菌の多様性と共通点

腸内細菌の種類は人によって大きく異なります。母親の胎内にいる間は腸内に細菌は存在せず、産道を通過する時や、その後、家族や友人との接触を通して腸内細菌を獲得していきます。そのため、個々人で腸内細菌の種類は違いますが、興味深いことに、腸内細菌が持つ遺伝子の機能はほぼ共通しているのです。

つまり、「菌の種類」は異なっても、「遺伝子の機能」は同じであるということは、自然淘汰が「遺伝子の機能」に作用していることを示唆しています。「腸内フローラ改善」「プロバイオティクス」「プレバイオティクス」といった言葉も近年よく耳にするようになりましたが、腸内環境を整える重要性が改めて認識されていると言えるでしょう。(栄養学専門家 山田花子氏のコメント)

腸内細菌との共生:超有機体への進化

私たちが腸内に細菌を棲まわせているのは、腸内細菌の遺伝子が必要不可欠だからです。人間は約2万個の遺伝子を持っていますが、腸内細菌の遺伝子は数百万個から一千万個以上にも及びます。クモが巣を必要とするように、人間は腸内細菌の遺伝子と共に生きています。

私たちは単独で生きているのではなく、自身の遺伝子と腸内細菌の遺伝子から成り立つ「超有機体」なのです。この驚くべき共生関係を理解することで、健康維持への意識も変わってくるのではないでしょうか。

まとめ:腸内環境を整え、健康な毎日を送ろう

この記事では、人体と腸内細菌の驚くべき共生関係、そして自然淘汰の力について解説しました。私たちは腸内細菌と共に生きる超有機体であり、腸内環境を整えることは健康維持に不可欠です。バランスの取れた食事、適度な運動、そして良質な睡眠を心がけ、健康な毎日を送るために、腸内環境にも気を配ってみてはいかがでしょうか。