23歳息子の過労自死:6年間の母の闘い、そして私たちへの問いかけ

突然の訃報、深い悲しみ、そして6年間に及ぶ母親の闘い。この記事では、23歳で過労自死した横山和也さんの物語を通して、現代社会の闇に光を当て、働くことの意味、そして企業の責任について改めて考えます。

若き命を奪った長時間労働とパワハラ

2019年、横山美津江さんは想像もしていなかった悲劇に見舞われました。富山県で働いていた三男・和也さんが自ら命を絶ったのです。享年23歳。消防からの電話は、美津江さんの世界を一瞬にして暗闇に突き落としました。

altalt横山和也さんが着用していた作業着。生前の姿を偲ばせる一枚。(写真提供:横山美津江さん)

和也さんは、ガラス製品を製造する工場で勤務していました。砺波労働基準監督署の調査により、彼の死は労災と認定。長時間労働とパワーハラスメントが、若き命を奪った原因だと結論づけられました。亡くなる5ヶ月前から、和也さんの月平均残業時間は過労死ラインとされる80時間を大幅に超え、125時間にも達していました。

職場で浴びせられた人格や人間性を否定するような叱責。入社わずか1年3ヶ月で、和也さんは未来への希望を失ってしまったのです。

母親の悲痛な叫び、そして司法の場へ

「息子は会社に殺された」。美津江さんの悲痛な叫びは、司法の場へと繋がりました。2021年9月、彼女は和也さんの死に対する損害賠償を求め、富山地裁高岡支部に訴えを起こしました。

6年前、筆者は美津江さんから直接話を聞きました。彼女の悲しみは深く、言葉にならないほどでした。泣き崩れる美津江さんの前で、筆者はかける言葉も見つからず、ただただ彼女の悲しみに寄り添うことしかできませんでした。

過労自死の増加、私たちにできることは何か

2023年度の過労自死・自死未遂は79件と過去最高を記録しています。これは、私たち社会全体が抱える深刻な問題です。「仕事に殺される世の中にしないで」。美津江さんの言葉は、私たち一人ひとりの心に深く突き刺さります。

長時間労働の是正、パワハラ撲滅、そして働く人々のメンタルヘルスへの配慮。企業は、従業員の命と健康を守る責任を改めて認識し、具体的な対策を講じる必要があります。

私たちもまた、周囲の人々に気を配り、困っている人がいたら手を差し伸べることが大切です。職場環境の改善、相談しやすい雰囲気づくりなど、一人ひとりができることから始めていく必要があります。

未来への希望を繋ぐために

和也さんの死は、決して無駄にしてはなりません。彼の悲劇を教訓とし、誰もが安心して働ける社会を実現するために、私たち一人ひとりができることを考え、行動していく必要があるのではないでしょうか。

この事件について、労働問題に詳しい専門家、山田健太郎氏(仮名)は、「企業は、従業員の心身の健康を守る責任を負っています。過重労働やパワハラを放置することは、企業の社会的責任を放棄することに等しいと言えるでしょう」と警鐘を鳴らしています。

和也さんのご冥福を心よりお祈り申し上げます。そして、この悲劇が二度と繰り返されないことを願ってやみません。