韓国政府が、米アラスカ州における液化天然ガス(LNG)開発プロジェクトへの参加を検討している。米政府からの通商圧力緩和を目的としたこの動きは、巨額の投資を必要とする一方で、韓国ガス公社の財務状況は極めて脆弱であり、実現への道のりは険しい。
アラスカLNGプロジェクト参加の背景と課題
韓国政府は、アメリカとの通商摩擦を軽減するため、アラスカLNGプロジェクトへの参加に意欲を見せている。ハン・ドクス大統領権限代行首相とアメリカのトランプ大統領との電話会談でも議題に上がり、鄭仁教通商交渉本部長も交渉材料として言及するなど、政府の姿勢は以前の慎重な姿勢から大きく転換している。
しかし、このプロジェクトには大きな課題が立ちはだかる。440億ドル(約6兆3200億円)にものぼる巨額のインフラ建設費用に加え、アラスカの厳しい気候条件を考慮すると、事業費はさらに膨らむ可能性もある。
韓国ガス公社本社
韓国ガス公社の苦境:14兆ウォンの未収金と400%超の負債比率
プロジェクトの主軸となる韓国ガス公社は、深刻な財務危機に直面している。都市ガス料金の未収金は14兆ウォン(約1兆4000億円)に達し、負債比率は400%を超えている。長年の低料金政策による「損する商売」が原因だ。
政府の財政支援も期待薄で、ガス公社単独での巨額投資は困難な状況だ。民間企業とのコンソーシアム結成も選択肢として挙げられているが、アラスカプロジェクトのリスクの高さから、国内外の民間企業は投資に慎重な姿勢を見せている。過去には、エクソンモービルなどの大手石油・ガス企業も投資を検討したものの、最終的には撤退している。
専門家の見解:リスク分担と国民への説明責任
仁荷大学のカン・チョング招聘教授(エネルギー資源工学科)は、「アラスカプロジェクトはリスクが非常に高く、民間企業の投資意欲は低い」と指摘する。
OECD地域開発政策委員会分科副議長のオ・ソンイク氏は、「国民負担の増加につながる可能性があるため、投資決定プロセスにおいては国会を含む各界各層からの意見を十分に聴取する必要がある」と提言。さらに、「投資が不可避な場合は、台湾や日本など他国との連携によるリスク分担が望ましい」と強調した。
今後の展望:難しい舵取りを迫られる韓国政府
韓国政府は、米政府との関係改善とエネルギー安全保障確保という二つの課題を抱える中、アラスカLNGプロジェクトへの参加という難しい舵取りを迫られている。巨額投資に伴う財務リスクと国民負担の増加、そして民間企業の消極的な姿勢という三重苦を乗り越え、プロジェクトを成功に導くことができるのか、今後の動向が注目される。