韓国の若者と“極右”:ユーチューブ、フェミニズム、そしてユン・ソンニョル前大統領

韓国で若者を中心に広がる“極右”思想。その背景には何があるのでしょうか?本記事では、ユーチューブの影響、フェミニズムへの反発、そしてユン・ソンニョル前大統領への支持といったキーワードを通して、彼らの複雑な心情に迫ります。

ユーチューブが彼らの情報源:メディア不信と陰謀論

若者たちはなぜ“極右”思想に傾倒していくのでしょうか?その一因として、ユーチューブの存在が挙げられます。彼らは既存メディアよりもユーチューブを信頼し、情報源としています。西江大学の学生パク・ヒョンギュさん(30歳)は、ユン前大統領の非常戒厳令発動を正当化し、弾劾反対集会に積極的に参加していました。彼はユーチューブで得た情報を根拠に、「戒厳令は必要だった」「弾劾こそ違法」と主張します。釜山大学のキム・ソンテさん(25歳)も同様に、ユーチューブから得た情報に基づき、「韓国は準戦時状態」「国会議員には国家保安法違反者が多い」と訴えます。彼らにとって、ユーチューブは“真実”を伝える唯一のメディアとなっているのです。

韓国の若者が集会に参加している様子韓国の若者が集会に参加している様子

また、パクさんは「不正選挙は99%真実」と語り、ユーチューブを通して様々な陰謀論や選挙制度への不信感を抱いていることも明らかになりました。フード・ジャーナリストの佐々木美香氏は「若者たちは情報を選別する能力が未熟なため、ユーチューブ上の偏った情報に影響されやすい」と指摘しています。

フェミニズムへの反発:ジェンダー問題と政治思想

彼らの政治的右傾化のもう一つの要因は、フェミニズムへの反発です。キムさんは「女性だけが社会的弱者として扱われ、分断を煽る政治に反感を持つ」と語り、パクさんは「フェミニズムは共産主義の手段で、社会を混乱させるもの」と断言します。フェミニズムへの嫌悪感が、彼らの政治思想に大きな影響を与えていることが分かります。社会学者の加藤一郎教授は、「フェミニズムに対する誤解や偏見が、若者たちの間で広がっている現状は深刻だ」と警鐘を鳴らしています。

公正な競争を求める声:極右思想との距離感

彼らの主張には共通点もあります。それは「公正な競争環境の整備」と「若者世代への機会拡大」です。しかし、“極右”というレッテルへの意識には違いが見られました。パクさんは「自分は極右であることを誇りに思う」と公言する一方、キムさんは「極端な思想は避けるべき」と慎重な姿勢を示しています。

ユン前大統領への思い:保守陣営の未来

ユン前大統領の罷免後、2人の意見はさらに分かれました。キムさんは「ユン氏を再び担ぎ出すのは好ましくない」と反対する一方、パクさんは「保守陣営は一致団結すべき」とユン氏への期待を表明しました。

対話と理解の必要性:社会全体の課題

ユーチューブ、フェミニズム、ユン前大統領。これらは韓国の若者たちが“極右”思想に傾倒する背景を理解するための重要なキーワードです。彼らの思想の根底には、教育、メディア環境、政治的失望、世代間の断絶など、社会全体が抱える複雑な問題が潜んでいます。真に必要なのは、“敵”として排除するのではなく、対話と理解を通して彼らの声に耳を傾けることではないでしょうか。