電動車椅子利用の高校生、私立高校入学拒否で波紋:合理的配慮はどこへ? バリアフリー教育の現状と課題

近年、障害者差別解消法の改正など、インクルーシブ教育の推進が叫ばれていますが、教育現場での合理的配慮は未だ十分とは言えない現状があります。香川県で起きた、電動車椅子を利用する中学生の私立高校入学拒否問題を機に、バリアフリー教育の現状と課題について改めて考えてみましょう。

電動車椅子利用の中学生、入学拒否の現実

香川県で、電動車椅子を利用する中学3年生が、志望する複数の私立高校から設備面を理由に入学を断られるという事態が発生しました。保護者は高校側との直接対話の機会もなく、中学校校長からは受験時に「合格しても入学しない」という確約を求められたといいます。文部科学大臣もこの問題に言及し、障害を理由とした入学拒否は不当な差別的取り扱いになりうるとの見解を示しました。

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2024年4月に施行された改正障害者差別解消法では、私立学校を含む全ての事業者に対し、障害のある人への「合理的配慮」と「建設的対話」が義務付けられています。しかし、今回のケースでは直接対話が設けられていなかったとして、香川県は当該私立高校を行政指導する方針です。

当事者の声:高校進学の選択肢の狭さ

小学1年生から車椅子生活を送るともみさんは、高校進学の際に私立高校への進学は難しいという認識を持っていました。県内の公立高校でエレベーターが設置されている学校は少なく、選択肢は限られていました。ともみさんの経験は、多くの障害を持つ生徒が直面する現実を浮き彫りにしています。

小学1年生から車椅子生活を送るともみさん小学1年生から車椅子生活を送るともみさん

東洋大学福祉社会デザイン学部教授の菅原麻衣子氏は、義務教育である小中学校と高校との違い、そして避難所としての機能を担う公立小中学校のバリアフリー化の必要性について指摘しています。

バリアフリー化の費用負担と課題

学校のバリアフリー化には多額の費用がかかります。例えば、エレベーター1基の設置には数千万円の費用が必要となる場合もあります。国からの補助金もありますが、公立・私立を問わず、学校経営における費用負担は大きな課題となっています。階段昇降機の設置など、代替手段を検討する学校もありますが、エレベーター設置に比べると利便性や時間効率の面で課題が残ります。

合理的配慮の推進に向けて

教育現場における合理的配慮は、障害のある生徒の学習機会の保障だけでなく、すべての子どもたちが共に学び、成長するインクルーシブ教育の実現に不可欠です。今回の入学拒否問題は、改めて教育現場におけるバリアフリー化の遅れと、合理的配慮の重要性を示すものとなりました。関係機関の連携、費用負担の軽減、そして社会全体の意識改革を通じて、真にインクルーシブな教育環境を整備していく必要があるでしょう。