大阪城は、いまや「中国城」?
片雲の風に誘われて、大阪城を観に行った―関西に出張したら、ビルの天窓から寝屋川を挟んで、壮麗な天守閣が目に飛び込んできた。そこでささやかな「大人の修学旅行」を敢行したのだ。
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天守閣は望めるのに、大阪城公園を歩くこと、歩くこと。かつ、周囲で聞こえてくるのは中国語ばかりではないか。
重要文化財の桜門をくぐって本丸に入ると、正面に「蛸石」が聳えていた。高さ5・5m、横幅11・7m、推定108tの巨石で、城の防御壁として備前岡山藩が築いた。
と、横の中国人グループの一人が、やおら仲間たちに解説を始めた。
「この巨石は大阪の象徴で、坂の途中のここに大きな石があるから、街を大坂と名づけたんだ」
えっ、それ違うでしょう? でも中国人たちは、納得の様子。
天守閣にあふれかえる中国人
天守閣前のチケット売り場は長蛇の列で、「30分待ち」との表示が出ていたが、こちらも中国語が飛び交う。ようやく順番が近づいた時、前の中国人女性の二人組から声が上がった。
「入場料は一人30元だって、マジで安い!」
中国人は人民元に換算して考えるクセがあるので、つまりは600円。ちなみに北京の紫禁城(故宮)の入場料は40元(約800円)で、来月から60元(約1200円)になる。
ようやく入場すると、「階段で上がる方は右側に、エレベーターで上がる方は左側に並んで下さい」と係員が声をかけていた。だが左側ばかり長い列……中国人観光客は皆、楽したいのだ。
私は階段で、スタスタと天守閣8階の展望台まで上がった。四方には雄大な上方の絶景が広がっていて、気分は太閤様。
とはいえ、そこも中国人観光客で一杯。ゴールド好きの中国人は、金のしゃちほこをバックに撮るのがお気に入りだ。
西側の廊下で突如、中国オジサマが、「杭州の我が家が見えるぞ!」と言い出し、周囲が爆笑した。ちなみに見えるのは、大阪府庁と六甲山系までだ。
中国人に征服された大阪城
思えば、大阪城を築城した豊臣秀吉は、明を征服しようと野望を抱き、2度にわたって朝鮮出兵したことで知られる。中国と縁があるとは言え、かなりの「悪縁」だ。
恐る恐る中国人グループにそのことを訊ねてみたら、若い女性の一団は、「えっ、そうなの?」
次に聞いた中高年グループには、ブラックジョークで切り返された。
「16世紀の豊臣による中国征服の野望は失敗した。だが21世紀にわれわれは、こうして大阪城を征服するのに成功したではないか、ハハハ……」
ホンマに大阪城は「中国城」のよう―太閤様は草葉の陰で何を想う?
そう言えば、近くで来月開幕する大阪・関西万博は、前売りチケットが売れなくて困っていると聞く。いっそそちらも「征服」してもらっては?
「週刊現代」2025年3月15・22日合併号より
近藤大介、週刊現代