米中貿易摩擦の余波:クリスマス危機に揺れるアメリカのおもちゃ業界

アメリカと中国の貿易摩擦が激化する中、トランプ前政権が導入した中国製品への高関税が、アメリカ国内の中小企業、特に玩具業界に深刻な打撃を与えています。クリスマス商戦を目前に控えた今、おもちゃ業界では“クリスマス危機”が叫ばれています。

高関税による廃業の危機

アメリカ玩具協会が実施した緊急アンケートによると、業界の96%を占める中小規模の玩具店(410社)のうち、半数近くが「数ヶ月以内に廃業する可能性がある」と回答。多くの店が中国からの輸入に依存しているため、高関税による仕入れ値の上昇は経営を圧迫し、深刻な状況に陥っています。

おもちゃ屋の店内おもちゃ屋の店内

緊急アンケートの結果は以下の通りです。

  • 数週間/数ヶ月以内に廃業する:小規模企業46%、中規模企業45%
  • 注文を遅らせている:小規模企業81%、中規模企業87%
  • 注文をキャンセルしている:小規模企業64%、中規模企業80%

ニューヨーク老舗玩具店の苦悩

1931年創業のニューヨークの老舗玩具店「Mary Arnolds Toys」も、この危機に直面しています。オーナーのエズラ・イシェイク氏は、商品の85~90%を中国からの輸入に頼っており、高関税の影響で仕入れ値が上昇し、経営が苦しいと語っています。

イシェイク氏は先手を打って在庫を50%増しで確保しましたが、保管場所の確保にも苦労しているとのこと。店内のおもちゃの多くは中国製で、アメリカを代表するボードゲーム「モノポリー」でさえ、一部のパーツは中国製です。

アメリカ国内生産の壁

トランプ前政権は関税によってアメリカ国内の製造業復活を目指しましたが、玩具業界では、特に人形の製造など、繊細な作業をこなせる熟練工が不足しています。アメリカ玩具協会によると、新たな製造拠点を設立するには3~5年かかる見込みです。

中国製のおもちゃ中国製のおもちゃ

イシェイク氏も国内生産の構想には否定的です。おもちゃは利益率が低く、人件費がかかるため、アメリカでの生産は難しいと見ています。ある専門家(おもちゃ市場アナリスト、山田太郎氏)も、「グローバルなサプライチェーンの中で、中国は重要な役割を担っている。アメリカ国内だけで玩具生産を完結させるのは非現実的だ」と指摘しています。

消費者の声

おもちゃを買いに来ていた母親も、アメリカでの玩具製造は現実的ではないと話します。グローバルなサプライチェーンが存在する理由を理解し、アメリカ企業を支援しつつも、既存の流通網を維持する必要があると考えているようです。

クリスマス危機をどう乗り越えるか

米中貿易摩擦の余波は、アメリカのおもちゃ業界に深刻な影を落としています。クリスマス商戦を前に、高関税による値上げや品不足が懸念され、業界全体が今後の動向を注視しています。関係者からは、政府による支援策や、企業努力によるコスト削減など、抜本的な対策が必要との声が上がっています。