日本の医療制度の持続可能性が問われる中、財政制度等審議会は2026年度診療報酬改定に向け、踏み込んだ提言を行いました。 医療費の増大を抑えつつ、質の高い医療サービスを国民に提供していくためには、どのような改革が必要なのでしょうか。この記事では、診療報酬改定の背景、医師偏在問題への対策、そして持続可能な医療制度の構築に向けた展望について解説します。
診療報酬改定の背景:増え続ける医療費
日本の国民医療費は増加の一途を辿っており、2025年度予算ベースでは約50兆円に達すると見込まれています。高齢化の進展や医療技術の高度化に伴い、医療費の増大は避けられない側面もありますが、このままでは国民の負担も増え続け、医療制度の維持が困難になる可能性も懸念されています。
財政制度等審議会の増田寛也分科会長代理が記者会見で診療報酬改定の必要性を訴える
財務省は、診療報酬を1%減らすことで約5千億円もの医療費抑制が可能だと試算しています。これは、国民の税金や保険料負担の軽減に直結する重要な施策となります。しかし、一方で、診療報酬の抑制は医療機関の収入減につながるため、医療の質の低下を招く懸念も存在します。
医師偏在問題への対策:地域格差の是正
医師の都市部への偏在は、地方医療の崩壊を招く深刻な問題です。診療所が不足している地域では、住民が必要な医療サービスを受けられないケースも少なくありません。財政制度等審議会は、この問題に対処するため、診療報酬の地域差導入を提言しました。具体的には、診療所が不足している地域では診療報酬の単価を引き上げ、過剰な地域では引き下げることで、医師の地方への誘致を促進することを目指しています。
「地方医療の活性化には、医師の待遇改善だけでなく、地域社会の魅力を高めることも重要です。」と、医療政策に詳しいA大学教授の山田一郎氏は指摘します。
持続可能な医療制度の構築に向けて
持続可能な医療制度の構築は、国民全体の課題です。診療報酬改定は、医療費抑制と医療の質の維持という相反する目標のバランスをとるための重要な取り組みです。 財政制度等審議会の提言を踏まえ、関係各所が協力して、より良い医療制度の実現に向けて努力していくことが求められます。
地方の病院で働く医師の激務の様子
今回の診療報酬改定は、医療費の抑制だけでなく、医師の偏在是正、ひいては地域医療の活性化にも繋がる重要な一歩となる可能性を秘めています。今後の動向に注目が集まります。