提供精子によって生まれた子どもたちの「出自を知る権利」をめぐり、大きな波紋が広がっています。12歳の少女の切実な訴えを機に、私たちはこの問題に改めて向き合う必要があるのではないでしょうか。
精子提供と出自を知る権利:12歳少女の叫び
2023年2月5日に提出された「特定生殖補助医療法案」。この法案は、第三者からの精子・卵子提供による生殖補助医療の制度を定めるものですが、当事者からは強い反発の声が上がっています。4月9日に行われた記者会見で、12歳の戸井田いちかさんは、提供者の国籍すら分からない現状、そして18歳まで情報開示を待つべき理由に疑問を投げかけました。「精子提供で生まれた子どもを特別視しないでほしい。普通の子どもと同じです。」と訴えるいちかさんの言葉は、社会全体への問いかけと言えるでしょう。
12歳の戸井田いちかさん
提供精子による出産:歴史と現状
提供精子を用いたAID(非配偶者間人工授精)は、1948年から日本で実施されています。しかし、長らく子どもにその事実を告知しないことが慣習とされてきました。そのため、成人後に真実を知り、大きな衝撃を受けるケースも少なくありません。近年、医師たちは親による告知を推奨するようになっていますが、「出自を知る権利」は依然として軽視されていると言わざるを得ません。2020年末に成立した法律でも、この権利の保障は「2年をめどに検討」とされ、具体的な進展は見られていません。
当事者団体の声:ふぁみいろネットワーク
いちかさんの母親である戸井田かおりさんは、「ふぁみいろネットワーク」の共同代表を務めています。この団体は、精子・卵子提供や代理懐胎など、多様な家族形成を支援する活動を行っています。かおりさん自身も、夫の無精子症のため精子提供で子どもを授かった当事者です。彼女をはじめとする当事者たちは、今回の法案に強い危機感を抱いています。
法案の問題点:情報開示の遅れと不透明性
今回の法案では、提供者の情報開示が18歳まで待たなければならない点が大きな問題となっています。子どもたちは、自身のルーツを知る権利をなぜ制限されなければならないのでしょうか?また、提供者の国籍すら分からないという現状も、情報開示の不透明さを浮き彫りにしています。 家族法に詳しい山田教授(仮名)は、「子どもの福祉を最優先に考えるべきであり、出自を知る権利を制限することは、子どものアイデンティティ形成に悪影響を及ぼす可能性がある」と指摘しています。
今後の展望:真の親子関係構築のために
いちかさんの訴えは、私たちに「家族とは何か」「親子とは何か」という根源的な問いを投げかけています。血縁の有無に関わらず、愛情と信頼で結ばれた親子関係を築くことが重要です。そのためにも、子どもたちの「出自を知る権利」を尊重し、透明性のある情報開示制度を確立することが急務と言えるでしょう。 真に子どもたちの福祉を考えた法整備が求められています。