鳥インフルエンザ(AI)の哺乳類への感染拡大が深刻化し、パンデミック(世界的大流行)への懸念が高まっている。韓国では、野生鳥類から哺乳類への感染を容易にする遺伝子変異が確認され、英国では羊、米国では乳牛への感染が報告されている。専門家は、AIが鳥類から哺乳類、そしてヒトへと感染した場合、大流行につながるリスクが高いと警鐘を鳴らしている。
哺乳類への感染リスク上昇、韓国でヤマネコの感染確認
韓国では、建国大学のイ・ドンフン獣医学科教授の研究チームが、国内の野生鳥類から検出されたH5N1型高病原性AIウイルスを分析。その結果、哺乳類への感染を容易にする36個の遺伝子変異が確認された。このウイルスに哺乳類が曝露されれば、感染リスクはさらに高まる。実際に、全羅南道和順郡で保護されたヤマネコから高病原性AIウイルスが検出された。これは韓国で野生哺乳類のAI感染が確認された初めての事例だ。イ教授は、現在韓国で流行しているAIウイルスは哺乳類への感染の可能性が高いと指摘し、米国でも同様のウイルスで基礎疾患のある患者が死亡した事例があると警告している。
韓国で防疫作業を行う職員
世界的な感染拡大、家畜への感染も増加
世界的に見ても、高病原性AIウイルスの哺乳類への感染は増加傾向にある。南米のゾウアザラシや南極のペンギンなど、海洋哺乳類の間でもAI感染が広がり、大量死が報告されている。特に懸念されるのは、人と接触が多い家畜への感染が増加している点だ。英国では世界で初めて羊のH5N1型感染が確認され、米国では乳牛を中心にAI感染が拡大している。
米国で乳牛農場労働者の感染急増
AIが哺乳類を経てヒトに感染する事例も増加している。米疾病対策センター(CDC)によると、2023年4月以降、米国で70人のH5N1型感染者が報告され、その半数以上が乳牛農場の労働者だった。2022年には感染者数はわずか1人だったことから、感染拡大の深刻さが伺える。
専門家、パンデミックの可能性を指摘
ウイルス専門家は、AIが次のパンデミックとなる可能性が高いとみている。米ネブラスカ大学グローバル保健安全センターのジェームズ・ローラー所長は、AIウイルスは哺乳類に広がるほどの突然変異を起こしており、ヒトに感染する形態に変化するリスクが高いと警告している。韓国疾病管理庁の池栄美庁長も、AIの人体感染と大流行はいつでも起こりうると警鐘を鳴らしている。
異例の4月発生、長期化する流行に懸念
通常、韓国では冬に流行するAIだが、2025年は4月まで感染が確認されている。忠清北道清州市のカモ農場、忠清南道牙山市の地鶏農場で高病原性AIの感染が確認された。異常気候の影響で渡り鳥の北上が遅れたことが原因の一つと考えられる。環境省は渡り鳥調査を延長し、AI予察を強化している。
部処間の協力と国家支援の必要性
鳥インフルエンザの種間感染拡大に対応するには、関係機関の協力と国家的な支援の拡大が不可欠だ。専門家は、野生動物のAI予察と研究の拡大、人体感染への先制的対応と対策の準備を急ぐ必要があると強調している。