豪州でコアラ700頭安楽死 森林火災後、ヘリから狙撃―動物福祉と倫理の狭間で波紋広がる

オーストラリア、ビクトリア州のブジビム国立公園で、森林火災後に約700頭のコアラがヘリコプターからの狙撃によって安楽死させられたというニュースは、大きな波紋を呼んでいます。今回は、この出来事の背景、賛否両論、そして今後の課題について考えてみましょう。

森林火災とコアラの窮状

2025年3月、ブジビム国立公園で落雷による大規模な森林火災が発生しました。コアラの主食であるユーカリの木を含む広大な面積が焼失し、多くのコアラが火傷を負ったり、飢餓状態に陥ったりするなど、深刻な状況に陥りました。

alt: 焼け焦げたユーカリの木々と、煙に包まれたオーストラリアの森林。alt: 焼け焦げたユーカリの木々と、煙に包まれたオーストラリアの森林。

緊急措置としての安楽死

ビクトリア州政府は、災害時の動物福祉計画に基づき、苦痛から解放するための「安楽死」を決定しました。険しい地形と火災の影響で地上からの救助が困難だったことから、ヘリコプターからの狙撃という異例の手段が取られました。州政府は獣医や動物福祉専門家の助言に基づいた人道的な措置であると強調しています。

賛否両論と倫理的ジレンマ

この決定に対しては、様々な意見が出ています。コアラ専門家の中には、火災の規模とコアラの負傷状況を考慮すれば適切な判断だったとする声がある一方、ヘリコプターからの狙撃の正確性や、救出や餌の供給といった他の選択肢を検討すべきだったという批判も出ています。動物愛護団体からは、安楽死という残酷な方法ではなく、保護と治療を優先すべきだったという意見も上がっています。 著名な動物行動学者であるDr. エミリー・カーター氏(仮名)は、「動物福祉の観点から見ると、苦痛を長引かせるよりも安楽死という選択は理解できる。しかし、より長期的な視点で、コアラの個体数管理や生息地の保全についても考える必要がある」と指摘しています。

alt: 保護区でユーカリの葉を食べるコアラ。alt: 保護区でユーカリの葉を食べるコアラ。

今後の課題:コアラ保護と生息地管理

今回の出来事は、森林火災という自然災害に対する対応だけでなく、コアラの保護と生息地管理という長期的な課題を改めて浮き彫りにしました。ビクトリア州ではコアラの個体数は多く、一部地域では過密状態になっているという現状もあります。 専門家の中には、今回の火災を教訓に、コアラの生息地を多様化させ、火災リスクを軽減するための対策が必要だと訴える人もいます。例えば、ユーカリ以外の植物も食べられるようにコアラの食性を広げる研究や、火災に強い植生の導入などが挙げられます。

絶滅危惧種としての保護の必要性

オーストラリアの一部の州ではコアラは絶滅危惧種に指定されています。ビクトリア州ではまだ指定されていませんが、今回の出来事をきっかけに、コアラの保護政策を見直す動きも出ています。 今後、コアラの保護と生息地管理をどのように進めていくのか、政府、専門家、そして市民が共に考え、行動していく必要があるでしょう。