韓国の科学技術人材流出危機:ブレーンドレインを食い止め、未来への活路を開くには?

韓国の科学技術界に激震が走っています。国家碩学(国家的に認められた傑出した学者)でさえ、国内に活躍の場を見いだせず、海外へ流出しているという現状が浮き彫りになりました。これは一過性の問題ではなく、韓国経済の将来を揺るがす深刻な危機と言えるでしょう。本稿では、この「ブレーンドレイン」問題の現状と、その解決策を探っていきます。

ブレーンドレインの深刻化:国家碩学の中国行き

韓国銀行の発表によると、2024年1-3月期のGDP成長率はマイナス0.2%と低迷。これは一時的なものではなく、アジア通貨危機や世界金融危機時よりも深刻な状況との分析も出ています。成長の牽引役だった大企業も新たな成長エンジンを見いだせず、米中技術覇権戦争の影響も重なり、韓国経済は岐路に立たされています。

こうした状況下で、優秀な科学技術人材の流出が加速しています。国家碩学1号と2号に選ばれた李永熙氏と李淇明氏が、定年後に国内で職を得られず、中国行きを選んだというニュースは、韓国社会に大きな衝撃を与えました。中国は科学技術研究開発で世界トップレベルに躍り出ており、世界中から優秀な人材を集めています。韓国の退任碩学を迎え入れたのは、単なる人材不足を補うためではなく、科学技術覇権国としての地位を確固たるものにする戦略の一環と言えるでしょう。

韓国の研究室の様子韓国の研究室の様子

少子高齢化の波:人材不足は待ったなし

韓国は深刻な少子高齢化問題にも直面しています。1970年代初頭には年間100万人以上だった出生数は、2023年には23万人台にまで急減。近い将来、科学技術研究者数も減少することは避けられないでしょう。イーロン・マスク氏が「韓国は滅びている」と警告したのも、この人口急減という現実を踏まえたものと言えるでしょう。碩学の流出だけでなく、絶対人口の減少は、韓国の科学技術発展の根幹を揺るがす深刻な問題です。

定年・報酬制限の撤廃:人材流出阻止の第一歩

優秀な科学技術人材を守るためには、米国のように定年や報酬の制限を撤廃する必要があるでしょう。KAIST(韓国科学技術院)は2022年に「定年後教授」制度を導入し、年齢制限を撤廃。成均館大学も「終身客員教授」制度を新設するなど、各大学・研究機関で変化の兆しが見られます。

科学技術関連の会議の様子科学技術関連の会議の様子

ブレーンゲイン:世界から人材を集める

人材流出を食い止めるだけでなく、積極的に海外から優秀な人材を誘致する「ブレーンゲイン」戦略も重要です。20世紀に米国が超強大国へと成長したのも、世界中から優秀な人材が集まったことが大きな要因です。西欧先進国の人材誘致は容易ではないかもしれませんが、アジアや東欧諸国から優秀な人材を呼び込む施策が必要です。

抜本的な改革:国の未来をかけた生存戦略

韓国政府と国会は、世界と競争し、優秀な人材を惹きつけるための抜本的な改革に取り組む必要があります。これは単なる国の繁栄のためではなく、生き残りをかけた生存戦略と言えるでしょう。韓国の未来は、この人材問題にどう対応するかにかかっています。