【耳目の門】(14)石井聡 質問通告制度 「やめてしまう」も選択肢…



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 閣僚が相次いで辞任したかと思えば、英語民間試験は申し込み開始の当日になって見送られるなど、政権側の不手際が目につく。

 それとは別に、この国会では結論の出ないまま重苦しく横たわっている事柄がある。

 台風が迫る中、官僚を足止めさせたのではないかという、国民民主党の森裕子参院議員による「質問通告」をめぐる問題だ。

 この制度があるため、対応に当たる各省庁の官僚は深夜労働を強いられ、心身ともに消耗する。それを目の当たりにして霞が関を去る官僚も出る。いい人材も集まりにくくなる。

 国益を大きく損ないかねない「制度」が不合理なことは、与野党ともに以前から分かっていた。いまだに変えられないのは、惰性と思考停止の産物と呼ぶしかあるまい。

 いったん質問通告の制度をやめてみて、どの程度困るか試してはどうか。

 ◆女性官僚の苦悩

 3年前、霞が関で働く女性官僚の有志が提言をまとめ、一部で関心を呼んだ。そこでは、霞が関の女性職員に対するアンケートの結果、「子供のいる女性職員の回答者すべて」が仕事と家庭の両立について困難や不安を感じていた。

 原因としては、約9割が勤務時間外に対応せざるを得ない業務の存在を挙げた。その業務とは何か。3人に2人が「国会質疑対応」を指摘したという。

 さすがに、一部の国会議員らによる改革論議も、女性官僚の働き方という観点を抜きには行えない段階になってきた。小さな一歩といえるが、どこまで実行に移せるか。

 今でも日本の国会では「日程闘争」に多くのエネルギーが注がれている。そのため、委員会質疑の日程や質問者が前日まで決まらない例が少なくない。

 だが、グラフで示したように、前日夕方の質問通告では、質問の細部をめぐる議員とのやりとり、省内での振り分け作業から答弁完成まで、夜通しの作業となることが想定される。

 本来の申し合わせといわれる2日前の通告をきちんと守っていれば、夜なべの作業はかなりなくせるはずなのだ。

 もっとも制度の存続を前提にものを考えるのが良いのか。立ち止まってみることも必要だ。

 「いったん通告制度をやめてみては」が、それほど暴論だとは思わない。なぜなら、国会での議論をどう位置づけるかに深くかかわるテーマだからだ。

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