【ワシントン=黒瀬悦成】米上院は19日、香港情勢で中国の習近平体制に圧力をかけることを狙った超党派の「香港人権民主法案」を全会一致で可決した。一国二制度を前提に香港を中国と区別し、関税や査証(ビザ)に関する優遇措置を毎年見直すことを米政府に義務づけた。下院でも同様の法案が10月15日に可決済み。両院が法案を一本化し、トランプ大統領が署名すれば成立する。
法案の主要提出者の一人であるルビオ上院議員(共和党)は「自由のために戦う香港の人々へ。私たちはあなた方とともにあり続ける。中国政府があなた方の自治を弱体化させるのを座視しない」と強調した。
シューマー上院院内総務(民主党)も習氏に対し「自由を否定し、香港で抗議する人々やウイグル族に暴力を振るい、検閲で中国国民に真実を伝えないようにしているようでは、偉大な指導者にはなれない」と非難した。
法案は、抗議デモの制圧で人民解放軍の投入も辞さない強硬姿勢を示す習体制を牽制し、自制を促す狙いがある。法案が成立すれば、習近平体制が苦しい立場に置かれるのは必至。習氏がトランプ氏に対し、米中貿易交渉を材料に法案の署名を思いとどまるよう迫ってくる可能性もある。
上院は19日、同法案に加え、香港警察に向けて催涙ガスやゴム弾、放水銃、スタンガンなどの装備を輸出することを禁じる法案も全会一致で可決した。
一方、トランプ氏は香港で警官隊と抗議デモの衝突が激化している問題に関し発言を控えている。同氏は過去に「中国が武力を行使すれば(米中交渉の)取引が困難になる」と述べ、中国に自制を促したことがあるものの、トランプ氏が貿易交渉を成立させたい思惑から署名を避けるのではとの懸念も浮上している。