米中貿易摩擦の激化は、レアアースを中心とした資源供給問題を浮き彫りにし、米国の国防戦略に大きな影を落としています。中国がレアアース輸出規制を強化したことで、米国は戦闘機や潜水艦などの製造に支障をきたす可能性に直面しています。
米国の焦りとトランプ大統領の対応
中国へのレアアース依存を懸念するトランプ大統領は、国防生産法を発動し重要鉱物の確保を急いでいます。大統領令では、レアアースを含む重要鉱物の国内生産能力向上、サプライチェーンの再構築などが指示されました。これは、中国への過度な依存が安全保障上のリスクとなることを認識した上での対応と言えるでしょう。
altF35戦闘機:レアアースは戦闘機の製造に不可欠な素材(神奈川県綾瀬市にて撮影)
中国のレアアース戦略と米国の脆弱性
レアアースは電気自動車や半導体など様々な製品に必要不可欠な素材ですが、米国はその供給の大部分を中国に依存しています。中国はレアアースの輸出規制強化を米国の関税政策への対抗措置と位置づけており、この状況は米国の脆弱性を露呈しています。特に、重希土類と呼ばれる7種類のレアアースの精製は中国がほぼ独占しており、その輸出規制は米国にとって大きな痛手となっています。専門家の中には、数ヶ月以内に米国の備蓄が枯渇する可能性を指摘する声もあります。
軍事への影響:F35戦闘機と原子力潜水艦
レアアースは最新鋭兵器の製造にも不可欠です。例えば、F35戦闘機には約400キログラム、原子力潜水艦には約4200キログラムものレアアースが使用されています。CSIS(戦略国際問題研究所)のグレースリン・バスカラン氏は、国防備蓄には限りがあり、代替調達先の確保は容易ではないと警鐘を鳴らしています。
交渉の行方と今後の展望
トランプ大統領は習近平国家主席との良好な関係を強調し、交渉による解決を模索していますが、中国側は米国の誠意ある対応を求めており、交渉は難航が予想されます。CSISのスコット・ケネディ氏は、米中双方が十分な経済的・政治的痛みを感じない限り、合意は難しいと分析しています。今後の米中関係、そして世界の経済・安全保障の行方は、レアアースを巡る攻防に大きく左右されることになるでしょう。