北朝鮮が2025年4月25日に開催した5000トン級新型駆逐艦「チェ・ヒョン号」の進水式。そこで注目を集めたのは、金正恩朝鮮労働党総書記の娘をはじめとする、高官の子どもたちが大勢参加していたことだ。未来世代の安定と繁栄を象徴する演出、そして「海軍の核武装化」という力強いメッセージを読み解いてみよう。
未来世代を担う子どもたちの登場:北朝鮮の新たなプロパガンダ戦略
朝鮮中央テレビが公開した映像では、金正恩氏が娘と親密に会話する様子が映し出されていた。軍事関連の公式行事への登場も増え、娘は次世代の指導者としてのイメージを徐々に構築しているようだ。金与正党副部長も、子どもと見られる2人と手をつないで登場。1月の新年慶祝公演にも同じ2人を伴っており、韓国国家情報院は実子である可能性を分析中とのこと。さらに、金徳訓党経済書記や朴正天党軍事委員会副委員長も孫と見られる子どもたちと共に出席。党・政・軍の高官たちが家族同伴で現れるという異例の光景は、北朝鮮の新たなプロパガンダ戦略を示唆している。
alt
従来の硬直した公式行事とは一線を画し、「社会主義大家族」を演出することで、国民に親近感と未来への希望を印象付けようとしていると考えられる。北朝鮮専門家の佐藤恵子氏(仮名)は、「子どもたちの登場は、体制の安定性と継続性をアピールする狙いがある」と指摘する。
「チェ・ヒョン号」進水式:海軍力強化と未来世代へのメッセージ
韓国のイージス艦に匹敵する能力を持つとされる「チェ・ヒョン号」。対艦ミサイル、艦対空ミサイル、巡航ミサイルなどを搭載可能とされ、北朝鮮海軍史上最大・最先端の艦船だ。この記念すべき進水式に指導層の子どもたちを参加させることで、「未来世代のための体制の強靭さと誇り」を強調する意図が込められていると分析されている。
金正恩氏は式典で、米国とその追従国による挑発行為を非難し、「あらゆる手段を総動員して国家の主権と安全を守る」と宣言。慶南大学のイム・ウルチュル教授は、「子どもや家族を前面に出す演出は明らかに計算されたもの。祝賀ムードを盛り上げることで、未来世代に体制への自負心を植え付け、政権の正当性と持続性を強調しようとする政治的メッセージが込められている」と分析している。
北朝鮮の未来への展望:核武装化と世代交代への布石か
今回の進水式は、単なる海軍力強化のデモンストレーションにとどまらず、北朝鮮の未来への展望を示唆していると言えるだろう。「海軍の核武装化」を象徴する場に子どもたちを登場させることで、次世代への継承というメッセージも発信している。国際情勢の不安定化が続く中、北朝鮮の動向に weiterhin 注目していく必要がある。