身元不明のまま、3400万円もの大金を金庫に残し、アパートで孤独死した女性。2020年4月、兵庫県尼崎市で起きたこの出来事は、多くの謎に包まれています。一体彼女は誰だったのか?なぜ多額の現金を遺したのか?この記事では、共同通信の元記者である武田惇志氏と伊藤亜衣氏による書籍『ある行旅死亡人の物語』(毎日新聞出版)を元に、謎多き女性の半生に迫ります。
孤独死と3400万円の遺産
尼崎市内のアパートで発見された女性の遺体は、死後しばらく経過しており、身元は不明。室内には3400万円もの現金が保管された金庫がありました。警察の捜査でも身元は判明せず、「行旅死亡人」として扱われることになったのです。
遺留品の中にあった現金。古いお札が輪ゴムで束ねられていた
「行旅死亡人」とは、氏名や本拠地が判明しないまま死亡した人のことを指します。行政は、このようなケースにおいて、火葬などの必要な手続きを行います。今回のケースでも、尼崎市は遺留金の一部を葬儀費用や官報広告掲載料に充て、火葬を行いました。
遺産目録と謎の宝石
太田弁護士の事務所に残された遺産目録には、以下の品目が記載されていました。
- ゆうちょ銀行と三井住友銀行の通帳(名義:田中千津子)
- 三井住友銀行のキャッシュカード(名義:タナカチズコ)
- 年金手帳(名義:田中千津子)
- 遺留金3460万520円
興味深いのは、金庫には現金以外にもネックレスなどの宝石類が保管されていたという点です。しかし、これらの宝石類は後に所在不明となっており、更なる謎を深めています。
行旅死亡人の取り扱いと相続財産管理人
尼崎市は神戸家庭裁判所に対し、相続財産管理人の選任を請求しました。これは、民法952条に基づく手続きです。相続人が不明な場合、裁判所が選任した相続財産管理人が、遺産の管理や処分を行います。
市が裁判所に提出した資料には、遺体発見時の状況や身元調査の経過が記されていました。遺体は玄関先で発見され、死因は不明。所持品から「田中千津子」という名前が浮上しましたが、身元は特定できませんでした。
遺留金の使途
遺留金は、葬儀費用や官報広告掲載料だけでなく、相続財産管理人選任の手続き費用にも充てられました。古いお札が輪ゴムで束ねられ、ビニール袋や封筒に小分けされていたことから、女性が長期間に渡り、大切に保管していたことが伺えます。
女性の正体を求めて
残された遺留品や書類から、「田中千津子」という名前が浮かび上がりましたが、それは本当に彼女の本当の名前だったのでしょうか?多額の現金や謎の宝石、そして孤独死という結末。彼女の人生には、一体どんな物語が隠されているのでしょうか?
次回、引き続きこの謎に迫ります。