偉人たちの生涯を描く大河ドラマは、主人公を取り巻く登場人物たちに注目するのも醍醐味の一つだ。しかし、物語が面白くなればなるほど複雑化する人間関係は、時に視聴者をヤキモキさせてしまう…。そこで今回は、大河ドラマ史上、最も視聴者をイライラさせたキャラを5人セレクトしてご紹介する。第1回(文・編集部)
藤原道隆(竜星涼)『光る君へ』
2024年放送の大河ドラマ『光る君へ』にて、井浦新演じる藤原道隆の嫡男・藤原隆家を演じた竜星涼。その自信過剰で無遠慮な言動は、かつて朝ドラ『ちむどんどん』で見せた“ニーニー”の姿を彷彿とさせた。一方で、予測不能な振る舞いや、どこか憎めないキャラクター性が、強烈な魅力となって視聴者を惹きつけた。
隆家は、権勢を誇った父・道隆の庇護のもとで育ったためか、自信家ぶりが際立ち、周囲への配慮に欠ける場面も多い。だがその一方で、満面の笑みを浮かべながら花山院(本郷奏多)に弓を放つという常軌を逸した行動をとりながらも、左遷の処分を真摯に受け入れる姿には、やがて武者たちを率いて堂々たる活躍を見せる彼の資質がすでに垣間見えていた。
また、長徳の変において兄・伊周(三浦翔平)を巻き込んでしまったことへの悔恨も、言葉には出さずともその表情や佇まいにわずかににじんでいたように思える。
さらに、道長(柄本佑)に取り入ろうとする場面では、それまでの傍若無人な態度から一転、笑顔で歩み寄る姿を見せるなど、隆家の機転と変わり身の早さが印象的だった。そこには必死さと同時に、人間らしさや柔軟な知性もうかがえる。
とはいえ、彼にとって過去はすでに過去のもの。過ちを抱えつつも、未来を見据え、今の自分にできることを冷静に判断し、政治の場で着実にその手腕を発揮しているにすぎない。
ゆえに、隆家は単なるトラブルメーカーではない。その場の空気を敏感に読み、瞬時に動くことのできる知略と胆力を備えた、決して侮れない存在である。
序盤から掴みどころのないキャラクターを見事に演じ切った竜星涼。規格外の行動で周囲を翻弄しながらも、どこかユーモラスで憎めない存在として描かれた隆家は、彼の巧みな演技によって“嫌われ役”を超えた、立体的で魅力ある人物へと昇華されていた。
(文・編集部)
編集部