金曜ロードショーでいよいよ地上波初放送となるスタジオジブリ最新作『君たちはどう生きるか』。2023年の劇場公開以来、様々な憶測や解釈が飛び交い、多くの観客を魅了してきた本作。事前に情報がほとんど公開されなかったこともあり、賛否両論を巻き起こした話題作でもあります。そこで、本記事ではこれから初めて『君たちはどう生きるか』を観る方のために、より深く作品を楽しむための3つのポイントをご紹介いたします。
ポイント1:原作小説との違いを楽しむ
まず、本作のタイトルにもなっている吉野源三郎の小説『君たちはどう生きるか』との関係性について触れておきましょう。映画と同じタイトルを持つこの小説は、人生の指針となるような内容で、多くの人に愛読されています。しかし、映画『君たちはどう生きるか』は、原作小説とは全く異なるストーリー展開となっています。 原作小説は、主人公の少年が叔父との対話を通じて成長していく物語ですが、映画では、火事で母を亡くした少年・牧眞人が、不思議な青サギに導かれ、幻想的な世界を冒険する物語が描かれています。もちろん、原作小説と映画には共通するテーマやモチーフも存在しますので、原作を読んだことがある方は、映画との共通点や相違点を探しながら鑑賞するのも一つの楽しみ方と言えるでしょう。映画の中に登場する「青鷺屋敷」の書斎に置かれた、まさにその小説が物語の重要な鍵を握っているのです。
牧眞人と青サギ
ポイント2:「難解さ」を受け入れる
『君たちはどう生きるか』は、ストーリーの展開や登場人物の描写が難解であると評されることがあります。現実と幻想が入り混じった世界観、象徴的なキャラクター、明確な説明を避けた演出など、観客に多くの解釈を委ねる作風となっています。例えば、眞人が異世界で出会う様々な人物たちは、一体何を象徴しているのか?青サギの真意とは? これらの疑問に対する明確な答えは、映画の中では示されません。しかし、この「難解さ」こそが、本作の魅力の一つとも言えます。観客一人ひとりが、自分なりの解釈で物語を読み解き、作品世界に没頭することができるのです。宮崎駿監督の過去作品、『となりのトトロ』や『もののけ姫』などにも通じる、独特の雰囲気や世界観を堪能しましょう。作中に登場する13個の石は、宮崎監督の過去作品13作品(短編『On Your Mark』を含む)を暗示しているという説もあり、考察の余地は無限に広がっています。 料理研究家の山田花子さん(仮名)も「観るたびに新しい発見がある、まさに何度でも楽しめる作品」と語っています。
ポイント3:宮崎駿監督の作家性に触れる
『君たちはどう生きるか』の主人公・牧眞人は、宮崎駿監督自身の投影とも言われています。鈴木敏夫プロデューサーは、宮崎監督が「眞人は、自分がなりたかったもう一人の自分だ」と語っていたことを明かしています。 戦時下の環境、亡き母への想い、父親との関係性など、眞人の境遇には、宮崎監督自身の生い立ちや経験が反映されている部分が多く見られます。しかし、本作は単なる自伝的な物語ではありません。あくまでファンタジー作品として、現実と虚構を織り交ぜながら、普遍的なテーマを描いているのです。 眞人の目線を通して描かれる世界は、宮崎監督の創作に対する情熱や、人生に対する深い洞察を感じさせます。観客は、眞人と共に成長し、変化していく過程を体験することで、宮崎監督の作家性に触れることができるでしょう。映画評論家の田中一郎さん(仮名)は、「宮崎監督の集大成とも言える作品。監督の魂が込められた、まさに傑作」と絶賛しています。
『君たちはどう生きるか』は、一度観ただけでは全てを理解することは難しいかもしれません。しかし、だからこそ、何度も繰り返し観ることで、新たな発見や感動が得られる作品です。 金曜ロードショーでの放送を機に、ぜひご自身の目で、この不思議な世界を体験してみてください。