世界に13億人以上の信者を抱えるカトリック教会。その頂点に立つローマ教皇フランシスコが4月21日死去した。教皇は慣例で「枢機卿」と呼ばれる人たちの中から選挙で選ばれる。それが「コンクラーベ」と呼ばれる教皇選挙だ。
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投票できるのは教皇の次に位の高い枢機卿の中でも、80歳未満の人に限られる。対象者は世界で135人おり、ローマ教皇庁によると今回は133人が出席の見通しだ。日本人も東京と大阪に2人いる枢機卿が参加する。
そのうちの一人、大阪高松大司教の前田万葉さん(76)に、2018年から務めている枢機卿としての仕事やコンクラーベの手順など、謎の多いバチカンの世界について聞いてみた。(共同通信=西村曜)
▽日曜夜、寝耳に水のニュース「枢機卿に選ばれた」
枢機卿はなりたくてなれるわけではない。他者から推薦され、教皇庁による調査がいつの間にか行われる。それをクリアした人の中から、教皇自らが選ぶ。この間、本人には候補に挙がっていることも伝えられない。
前田さんの場合、発表まで教皇庁からの連絡もなく、インターネットのニュースで知った。
前田さんは笑いながら振り返る。
「知ったのは日曜の夜だった。当時放映していたNHKの大河ドラマ『西郷どん』が好きでね、見終わった頃に知り合いの司教から電話があった。ネットニュースを見たら(私が)枢機卿になったと出ていて驚いた」
その後、バチカンのサンピエトロ大聖堂で教皇による叙任式と呼ばれる任命式に臨んだ。枢機卿のシンボルである赤い帽子を教皇にかぶせてもらい、金色の指輪をもらう。指輪は枢機卿だけが着ける専用のものだ。
枢機卿になるとローマ市内に指定教会を割り当てられる。前田さんの教会もローマにある。
枢機卿には、バチカンで教皇の側近として仕える人もいれば、世界各地の教会で働く人もいる。前田さんは枢機卿になってからも、元々務めていた大阪高松大司教を続けている。管轄は名古屋から中四国に及ぶ。ローマの指定教会の仕事もする一方、普段は大阪市中央区にある「大阪高松カテドラル聖マリア大聖堂」にいることが多い。
▽枢機卿の仕事とは。会議は同時通訳、オンラインも
前田さんは年に何度かバチカンに行く。他の枢機卿の任命式に出席したり、日本から巡礼団を連れて行ったりするためだ。それらの機会に教皇に面会することもあるといい、あるときは面会日が教皇フランシスコの誕生日と重なったことから、バースデーケーキをプレゼントして日本から一緒に行った人たちと祝ったこともあった。
バチカンの広報省委員も務めているため、関連の会議や、枢機卿全体で行う枢機卿会議にも出る。現在の枢機卿会議はラテン語を使わないという。英語、フランス語、イタリア語、スペイン語の同時通訳がつき、他の国際会議と変わらない。