任天堂『Switch2』vs.SONY『PS5』「30兆円市場」の覇権争いがクライマックスへ!


任天堂『Switch2』満を持して発売へ

4月2日、任天堂は『Nintendo Switch』の後継機となる『Nintendo Switch2』(以下、『スイッチ2』)を6月5日に発売すると発表した。日本語・国内専用版が4万9980円、多言語対応版は6万9980円。現行機の希望小売価格は3万2978円であることから、かなり強気の価格設定と言える。

【画像】任天堂 vs. SONY これまでの主要ハード販売台数「一覧」

4月3日には代々木体育館(渋谷区)でメディア向け体験会が行われ、会場はヒカキン(36)や、はじめしゃちょー(32)など名だたるインフルエンサーのほか、多くの報道陣でゴッタ返していた。体験会に参加したゲームアナリストの平林久和氏はこう話す。

「『スイッチ2』にはさまざまな新機能が実装されていますが、代表的なのがマウス機能です。本体から『Joy-Con2』(コントローラー)を取り外し、縦に置くことでパソコンのマウスのような操作が可能になります。

体験会では、『DRAG x DRIVE』という車いすバスケットボールのゲームでマウス機能の素晴らしさを感じました。それぞれの車輪を左右のコントローラーで動かすのですが、この操作性がバツグン。シュートを打つ際は、ボタン操作ではなく、ジャイロセンサーを使って実際に腕を振ります。

このジャイロ機能とマウス機能の組み合わせによって、本当にスポーツをしているような体験が味わえます。近年ではPCゲームが世界のトレンドになりつつあるため、マウス機能の実装によってPCゲームユーザーを引き込む狙いもあるでしょう」

マウス機能のほかにも、″隠れ転売対策″と言える新機能が搭載されている。

「押すだけでゲームチャットを開始できる『Cボタン』です。ゲーマーのニーズに応える新機能ですが、中国人による転売対策にもなっています。任天堂はこれまで、中国を中心とした違法転売市場への流出に悩まされてきました。

しかし中国は他国とのチャットを禁じているため、『Cボタン』があると販売できない。現時点で任天堂は『スイッチ2』の中国への発売見送りを表明しています」(同前)

いまや全世界が注目するナンバーワンハードに成長した『スイッチ』シリーズだが、その道のりはけっして平坦なものではなかった。

販売元の任天堂は、年間売り上げ1兆6700億円を誇る言わずと知れた業界のトップランナーで、’83年発売の『ファミリーコンピュータ』をはじめ、『ニンテンドーDS』(’04年発売)や『Wii』(’06年発売)など数々の特大ヒットを記録してきた。

ところが、’17年の『スイッチ』発売発表時、任天堂の株価は下がったのだという。

「発表会の最中も、下落していました。その理由は『スイッチ』が据(す)え置きと携帯の二つの機能を持っていたこと。当時、任天堂には『ファミコン』や『Wii』といった据え置き機のセグメントと、『ゲームボーイ』や『DS』という携帯機の二つのセグメントがありました。

投資家は『これまで据え置きと携帯の二輪で業績を上げてきたのに、一つにまとめてしまえば売り上げは落ちる』と判断したのでしょう」(前出・平林氏)

ところが、この窮地を任天堂は社内改革によって乗り越えた。それまで据え置き機部門と携帯機部門はそれぞれ独立していたが、当時の岩田聡社長はそれを解消。『スイッチ』開発のために、二つの部門のソフト部隊を統合することで開発力を強化した。

その結果、″失敗″と言われる前作の『Wii U』時代には年間3〜4本しか発売しなかったこともあったソフトの開発本数を毎月1本ペースに上げることに成功し、『ゼルダの伝説』や『スプラトゥーン』シリーズのヒットにも助けられ、『スイッチ』は1億5000万台超えの売り上げを記録したのだった。

その『スイッチ』のヒットを受け、任天堂が満を持して発売した『スイッチ2』は、前作に比べ処理速度や画質が飛躍的に向上。『エルデンリング』や『龍が如く』など、これまでSONYの機体で馴染みの深かったリアル志向のシリーズをラインナップするなど、″打倒PS5″の意欲を感じられる戦略を採用している。

◆技術力vs.″面白さ″

迎え撃つSONYのゲーム事業(SIE)は、任天堂を大きく上回る年間売り上げ4兆2700億円を記録。テレビなど家電事業が縮小傾向にある同グループにおいて、主力級の働きを見せている。

「SONYはリアル志向で″大人の趣味″としてのゲームを追求してきました。初代『PlayStation』で3D画面を実現し、画質を向上させて’00年に発売したPS2は1億6000万台という歴代1位のヒットを記録。よりリアルなゲームを好む欧米で大きな反響を呼びました」(ITジャーナリストの西田宗千佳氏)

『ファミコン』『Wii』『スイッチ』と、機体ごとに名前を変えてきた任天堂に対し、SONYは一貫して『PS』シリーズで勝負してきた。

「任天堂は『スイッチ』の分離機能などゲーム業界にさまざまなイノベーションを起こしてきましたが、SONYはとにかく『画質と処理速度を上げ、大作ゲームの世界観を余すところなく表現する技術力』で勝負してきた。結果として、大人にもゲーム市場が拡大したのです。

『PS4』では自分が遊んでいるゲームをボタンひとつでオンラインに配信できるようになりましたし、『PS5』ではロード時間を大きく短縮しました。任天堂とは異なる形でゲームマニアを満足させる路線を進んでいると言えるでしょう」(同前)

家庭用ゲーム機の中では群を抜く性能を持つ『PS5』。30万〜40万円は当たり前の高性能ゲーミングPCに手が出ない若年層を中心に、これからも根強い支持を集めることだろう。

「とはいえSONYのゲーム事業は経営にシビアで、’21年にゲーム開発の拠点だった『SIEジャパンスタジオ』を事実上閉鎖するなど、儲からない部門を切り捨てる動きも見せている。この先、ストリーミングのゲーム(ハードにダウンロードせずに遊べるゲーム)が台頭してくれば、ハードからの撤退も視野に入れたドライな決断を下すはず。

一方の任天堂は″面白さ″で勝負しているように感じます。以前、任天堂の宮本茂代表取締役は会見で『なぜ東京に行かず本社を京都のままにしているのか』について説明したことがあります。

宮本さんは、『東京は流行に敏感だから、流行に従うものづくりをするようになってしまうのが怖い。京都にいると流行を無視してものづくりができるんだ』と話していました」(前出・平林氏)

いまや全世界で30兆円市場となったゲーム業界の頂上戦争の行方を左右する″Xデー″は、着々と近づいている。

『FRIDAY』2025年5月9・16・23日合併号より

FRIDAYデジタル



Source link