韓国、反日にこだわり日米との悪化リスク失態避ける GSOMIA


 【ソウル=名村隆寛】韓国は今年8月の日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)破棄決定以降、米国から失効回避の働きかけを受けてきたが、「同盟関係であろうが、国益のためには何も優先することはできない」(韓国大統領府関係者)と主張していた。だが、破棄を「自殺行為」「韓国の信頼危機」とする野党やメディアの批判にさらされ、文在寅(ムン・ジェイン)政権として日米との関係悪化のリスクを避けたとみられる。

 文政権が7月以降の約5カ月間、最も危機感を高め反発し続けたのは、日本政府による半導体素材の輸出管理厳格化の措置だ。韓国政府は日本に対し報復措置を連発した。

 安保上の輸出管理で優遇する「ホワイト国」から日本を除外、東京電力福島第1原発の放射性物質にからみ輸入検査を強化。国民レベルでは日本製品不買や日本への観光旅行ボイコットが続いている。その決定打として8月にGSOMIA破棄を決めた。「GSOMIAを持ち出せば。困った日本は態度を変えるだろう」との計算だった。

 協定破棄について、文大統領は「日本に原因がある」と断言。文氏以下、韓国政府高官らは最後まで「日本が輸出統制措置を撤回しない限り、協定は延長しない」と言い張った。

 世論調査会社「韓国ギャラップ」の22日の発表では、協定破棄を韓国国民の51%が支持し、不支持は29%。文政権の強気な対日姿勢が国内で支持を受け、世論の半数以上が「日本には妥協するな」と訴えた。

 ただ、協定破棄への反対は保守派を中心に根強かった。東亜日報は22日、社説で「対話努力を無為にし、(日韓関係改善の)雰囲気の回復だけにどれだけ多くの時間と努力が必要か分からない」と対日関係悪化を懸念。米韓同盟への悪影響にも触れ、「支持層だけを見る外交は自害的な結果を出すだけだ」と政権を批判していた。

 結果として現実的な「国益」を考えた形の韓国は、朝鮮半島の安全保障に関わる重要な選択で、反日感情という名分にとらわれて実利を失う失態をとりあえず回避することができた。



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