(CNN) 米ニューヨーク・マンハッタンの超高級住宅街に立つ極細の超高層マンション「432パーク・アベニュー」の管理組合が、マンションのデベロッパーを相手取って訴訟を起こしている。「広範囲な詐欺」を行い、マンションの構造上の甚大な不具合を隠したというのがその主張だ。不具合にはマンションのファサードに生じた「数千カ所のひび割れ」も含まれるという。
【画像】強風対策として、高層階の一部には入居者を入れず空気を素通りさせている
管理組合は不動産会社のCIMグループに対し、水漏れにつながる建物の損傷を明らかにせず、マンションの不動産価値を毀損(きそん)したと訴える。
この他にも、先月下旬に提出された訴状には、マンションのプロジェクトに携わった複数の建設会社の名が記されている。マンションのオーナーらは全体で1億6500万ドル(約240億円)を超える規模の損害賠償を求めている。
2015年に完成した高さ425メートルの超高層マンションは、高さと幅の比率が15:1と、超極細の外見で知られる。強風に対処するため入居者のいない階を複数設置し、空気を素通りさせる構造を採用している。
不動産デベロッパーのハリー・マックロー氏は13年、米紙ニューヨーク・タイムズの取材に答え、このマンションをエンパイアステートビルになぞらえていた。同氏が所有する建設会社も今回の訴状で名前が挙がっている。
しかしその後は、マンションのオーナーや入居者から建築上の問題を訴える不満の声が相次いだ。訴状によれば17年以降、20件を超える水漏れの事案が報告されている。管理組合は21年にも、エレベーターやダストシュートの不具合などを理由に訴訟を起こしていた。
今回の新たな訴訟ではマンションのファサードについて、目立ったひび割れや剥離(はくり)、その他形態の劣化が数千カ所確認できるとしている。ここには建物の中心部に生じた深さ25センチのひび割れも含まれるという。ひび割れから水が入り込み、マンションを支える鉄筋コンクリートの柱の鉄が一部腐食していると訴状は主張する。
21年の訴訟でもひび割れは取り沙汰されていたが、今回管理組合は企業側がこうした不具合の規模や深刻さを隠蔽(いんぺい)しようと「共謀した」証拠が明らかになったとしている。
前出のCIMグループと建設会社のSLCEアーキテクツはCNNに宛てた声明で、原告の主張を「激しく」否定。訴訟の却下に向けて動いていることを明らかにした。
訴状はひび割れの原因を「実験的な」ファサードの素材に使用されたホワイトコンクリートにあると主張している。訴状によればホワイトコンクリートは「主に美観を目的に使用」されており、建物の構造を支えるための補強が必要だったという。
コンクリートについてはさまざまなコンサルタントが懸念の声を上げていたにもかかわらず、CIMグループはこれを無視したと訴状は糾弾。模型を使ったテストでもホワイトコンクリートを使うことでひび割れが生じるとの結果が示されていたが、CIMグループと請負業者は使用を強行したという。
訴状によると、ファサード表面にエラストマー素材のコーティングを施し、水や空気の侵入を防ぐ措置も提案されたが、建物の見た目が「著しく変化」することで魅力が損なわれるとして採用されなかったという。
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原文タイトル:Condo owners sue over New York skyscraper they say is riddled with ‘thousands of severe cracks’(抄訳)