「あんぱん」豪戦死 釜次慟哭「彼の姿が脳裏に…朝ドラの醍醐味」吉田鋼太郎語る裏側 舞台級名演に反響 


 女優の今田美桜(28)がヒロインを務めるNHK連続テレビ小説「あんぱん」(月~土曜前8・00、土曜は1週間振り返り)は20日、第37回が放送され、若き石工・原豪(細田佳央太)の戦死が判明した。師匠・朝田釜次は慟哭、最愛の人の生還を祈り続けた朝田蘭子(河合優実)は絶句。視聴者も涙に暮れた。釜次役の俳優・吉田鋼太郎(66)に撮影の舞台裏を聞いた。

【写真】第37話。泣き崩れる朝田釜次(吉田鋼太郎)に、朝田蘭子(河合優実)は…

 <※以下、ネタバレ有>

 「ドクターX~外科医・大門未知子~」シリーズなどのヒット作を生み続ける中園ミホ氏がオリジナル脚本を手掛ける朝ドラ通算112作目。国民的アニメ「アンパンマン」を生み出した漫画家・やなせたかし氏と妻・暢さんをモデルに、激動の時代を生き抜いた夫婦を描く。

 吉田の朝ドラ出演は、ヒロイン・安東はな(吉高由里子)の親友・葉山蓮子(仲間由紀恵)が嫁ぐ九州の石炭王・嘉納伝助役が話題を集めた2014年度前期「花子とアン」以来11年ぶり。同じ中園氏の脚本。今回演じる釜次はその道一筋の石工で、手先は器用だが、人への接し方は不器用。職人気質の頑固者も、家族への愛情は人一倍あり“釜じい”と親しまれる。

 第37回は1939年(昭和14年)秋、兵事係(高橋岳則)が朝田家へ。「原豪さんの留守宅はこちらですね」。作業中の釜次は「はい」と立ち上がる。「この度はまことにご愁傷さまです」。釜次は紙を受け取ると、放心。「ご苦労さまでございました」。何とか言葉を絞り出し、一礼した。

 朝田羽多子(江口のりこ)朝田くら(浅田美代子)朝田メイコ(原菜乃華)の表情が凍りつく。

 兵事係が帰ると、釜次は「豪よーーー!」。膝から崩れ落ち、慟哭した。

 ちょうど蘭子が勤務先の郵便局から帰宅。「おじいちゃん?」。釜次の左手にある紙を目にし、すべてを悟った。出征前夜にようやく結ばれた豪との永訣――。

 第4回(4月3日)、朝田結太郎(加瀬亮)が海外出張の帰り、船上で急逝。第5回(4月4日)、釜次は墓石に愛息の名前を彫り「息子の墓石を彫ることになるらあて…」――。視聴者の涙を誘った。

 吉田は「台本を読み進めるうちに、自分が彫ることになるんだろうなと思っていました。一番最初に撮ったのも結太郎の葬列のシーンだったんですけど、釜次が本当に悲しんでいるんだと、視聴者の皆さんに実感していただける演技をしないとダメですよね。そのためには、例えば涙を流さなくてもよくて、それよりは、その悲しみに至るまでのストーリーの中に釜次としてどう一本筋を通して存在できているか、の方が大事。そこをいつも心掛けています。その上で、釜次は悲しんでいると誰もが分かる、予想がつくシーンで、いかに新鮮に演じられるか。毎回、難しさと闘っています」と振り返っていたが、愛息に続き、息子同然の豪にも先立たれた。

 「佳央太くんが本当に豪ちゃんそのもので、寡黙だけど、真っすぐで優しい青年。悲しい報せを受け取った時、石を彫っている姿、朝田家を見守っている姿、彼の色々な姿がグルグルグルグル脳裏によみがえってきました。撮影で長い時間、一緒にいるわけですから、自然と情が移って、いつの間にか家族のようになっているんですよね。だから、無理やり悲しみの芝居をしなくていい。これが朝ドラの醍醐味なんだなと、あらためて実感しました」

 巨匠・蜷川幸雄氏が演出を手掛けた舞台作品の常連で、折しも蜷川氏からバトンを受け継ぎ、自身も上演台本・演出を担い、魔女役で出演している「彩の国シェイクスピア・シリーズ2nd」の第2弾「マクベス」(彩の国さいたま芸術劇場)が上演中。もはや演技を超えた、釜次の心からの悲痛な叫びは、シェイクスピア悲劇の一場面を見るようだった。

 豪の墓石も彫らなければならないのか。釜次の心痛は想像を絶する。

 SNS上には「吉田鋼太郎さん、シェークスピア劇のような慟哭」「舞台声量の号泣」「流石、シェークスピア役者」などと絶賛の声。テレビサイズに収まらない名演が反響を呼んだ。



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