アメリカのドナルド・トランプ政権が、裁判所の命令に反して、移民を第三国の南スーダンへ強制移送したことについて、マサチューセッツ州のブライアン・マーフィー連邦判事は20日、法廷侮辱罪に問われる可能性があると警告した。
マーフィー連邦判事は先月の命令で、強制移送の対象者が異議を申し立てられる「実質的な機会」を当人に与えないまま、政府が第三国へ追放することを禁じていた。
南スーダンへの追放はこの裁判所命令に反するもので、法廷侮辱罪に問われる可能性があると、マーフィー判事は指摘している。
マーフィー判事への緊急の訴えの中で、移民担当弁護士は、ミャンマーとヴェトナムの市民を含む移民12人を乗せた航空機が、20日に南スーダンに到着したとしている。
南スーダンは世界最貧国の一つで、近年は紛争と政情不安が続く。
トランプ大統領は昨年の大統領選で公約に掲げた、大規模な移民の国外追放を実現しようとしており、連邦裁判所と対立している。マーフィー判事の警告は、両者をめぐる最新の動き。
■移民担当弁護士が送還阻止を要請
全米移民訴訟同盟(NILA)の弁護士は20日、南スーダンへの移民移送を阻止する緊急命令を出すよう、マーフィー判事に要請した。
ジョー・バイデン前大統領によって連邦判事に指名されたマーフィー氏は、司法省側の弁護士に対し、今回の移送は「私が出した予備的な差し止め命令に反している可能性が濃厚だ」と述べた。
「私が聞いたところによると、これは法廷侮辱罪にあたる可能性があるようだ」とマーフィー氏は付け加えたと、米メディアは報じた。
司法省側のエリアニス・ペレス弁護士は、今回の強制移送対象者のうちミャンマー人1人は、南スーダンではなくミャンマーに戻されたとした。
しかし、強制移送されたとみられるヴェトナム人男性については、「機密事項」だという理由から公表を避けた。ペレス弁護士によると、この男性は殺人罪で有罪判決を受けているという。
国土安全保障省の弁護士によると、追放対象者を乗せた航空機には、少なくとも1人のレイプ犯が含まれる。
マーフィー判事は、当該機をアメリカへ引き返させるようには命じなかったものの、移民は米政府の管理下にとどまり、21日の審問まで「人道的に扱われなければならない」と述べた。
また、当該機が南スーダンに着陸した後、駐機場に留め置かれることもあり得るとした。
マーフィー判事は先月18日、不法移民について、母国以外への強制移送に異議を申し立てる機会を与えるよう米政府に求める判断を下した。
一部の移民がリビアに送られようとしているとの複数報道を受け、マーフィー判事はそのような動きは裁判所命令に反するものだと指摘した。
BBCは国土安全保障省にコメントを求めている。
■ミャンマーとヴェトナムの移民はどこへ
裁判所資料に「N.M.」のイニシャルで記載されているミャンマー人男性の弁護人によると、男性は英語が得意ではなく、テキサス州の移民収容施設の職員に対して移送通知に署名するのを拒んだという。
20日朝、男性の名前がICEの被収容者検索で表示されなくなっていることに弁護人が気づき、収容施設に電子メールを送信したと、裁判所資料に書かれている。弁護人はその後、男性がアメリカから国外退去させられたことを知らされた。
弁護人が、男性の移送先を訪ねると、「南スーダン」と書かれたメールが返ってきたという。
弁護団は、裁判所資料に「T.T.P.」のイニシャルで記載されているヴェトナム人男性について、ミャンマー人男性と「同じ運命をたどったとみられる」と語った。
ヴェトナム人男性の配偶者は弁護人宛てのメールの中で、強制移送されたとみられる10人前後の移民グループにはラオスやタイ、パキスタン、メキシコの市民も含まれていると述べたと、ロイター通信は報じている。
「助けてください!」と、男性の配偶者はメールで訴えた。「こんなことは許されない」。
米政府の渡航勧告は、「犯罪、誘拐、武力紛争」を理由に「南スーダンへの渡航を控える」よう呼びかけている。
世界で一番新しい国の南スーダンでは、スーダンからの独立を宣言した2011年以降、血なまぐさい紛争が続いている。
トランプ政権はこれまで、移民を受け入れるよう複数の国に要請している。
今月初めにはルワンダが、アメリカと移民の受け入れをめぐり協議していることを認めた。また、移送先の候補として、ベナン、アンゴラ、赤道ギニア、エスワティニ、モルドヴァが報じられている。
トランプ政権のホワイトハウスとアメリカ各地の裁判所は、さまざまな問題をめぐり対立している。南スーダンへの移民移送はその最新案件。
先月には、ワシントン連邦地裁のジェイムズ・ボアスバーグ判事が、トランプ政権を刑事裁判で侮辱罪に問う「相当な理由」を見つけたと述べている。
米政府が3月に、ギャング組織のメンバーとされる南米ヴェネズエラ人を強制移送したことについて、ボアスバーグ判事は、政府は移送対象者に異議を申し立てる機会を与えず、移送措置の差し止めを求める裁判所命令に違反したと判断した。
(英語記事 Judge warns US deportations to South Sudan may breach court order)
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