親の援助で夢のマイホーム購入を実現できるのは、家計にとっては非常にありがたいことです。しかし、「親と同居」という条件付きの場合、生活面・金銭面のさまざまなメリットと同時に、見過ごせないデメリットも潜んでいます。ルールや距離感を曖昧にしたまま進めてしまうと、かえってトラブルの火種になることも。今回は、そんな「ありがたさの裏側」に潜む現実を、ある40代夫婦の事例をもとに、CFP®の伊藤寛子氏が解説します。
親のありがたい援助のおかげで夢のマイホーム購入を実現
大川さん夫婦は共働きで、夫(41歳)の年収が500万円、妻(40歳)が200万円。世帯年収は約700万円です。小学生と保育園児、2人の子どもを育てています。現在は賃貸マンションに住んでいて夫の会社から家賃補助が出ていますが、社内規定により、あと2年で終了する予定です。
子どもが大きくなってきたことで部屋も手狭になり、「そろそろ広い家に住みたい」と考えていましたが、日々の生活費と教育費で手一杯。貯蓄は約300万円と、住宅購入に踏み切るには心もとない状況でした。そんなタイミングで、70代になる夫の両親からこんな言葉が。
「マイホーム、半分出してあげるから。一緒に住まない?」
夫は一人っ子で、将来的に実家を継ぐ立場です。しかし、実家は築年数が古く、住み続けるには修繕やリフォームに多額の費用がかかります。
両親から「それならいっそ、同居用に新築したほうが効率的だし、お互いの負担も減るんじゃないか」と提案を受け、話は一気に進みました。
「やったね、これでマイホームが買える!」
マイホーム購入を夢見るものの、現実的にはなかなか厳しかった大川さん夫婦にとって、親から援助してもらえるということであれば、願ったり叶ったりです。
同居への不安もありましたが、大川さんの両親との関係もうまくいっていたことから、大丈夫だろうと迷いながらも二世帯住宅の購入を決断しました。
大川さん夫婦は共働きで、仕事、家事、育児と慌ただしい毎日を送っていました。夫妻にとって、親と同居することで家事や子育ての支援が得られることも、魅力のひとつでした。