『あんぱん』朝田家も参加 『エール』『ブギウギ』にも登場した“国防婦人会”とは?


【写真】“愛国の鑑”として教壇に立つのぶ(今田美桜)

 特に活動が活発になってきているのが「大日本国防婦人会」である。朝田家でも母の羽多子(江口のりこ)と妹のメイコ(原菜乃華)が加入し、割烹着に勇ましい赤いたすきを掛け、町内会の掲示板にお知らせを貼っていた。また、のぶへ縁談を持ちかける大日本国防婦人会の人たちもたくさんいた。

 この「婦人会」は、戦時中に実際にあった組織で、出征兵士の見送りや兵士たちの士気を鼓舞するために、中に日用品などを入れて送った慰問袋を作る活動をしていた。「婦人会」の活動は、満州事変や上海事変が起こった1930年代前半に大阪の主婦らが出征兵士や応召のため帰郷する若者に湯茶を振舞ったのが始まりとされている。それが広まり、軍とは直接のつながりのない婦人たちが「大阪国防婦人会」を発足。さらに軍の支援を取り付けて「大日本国防婦人会」となり、全国に拡大した。

 彼女たちの活動は結果として戦争の“後方支援”をしていることになるのだが、あくまで自発的にやっていることで、その背景には「兵隊にはなれないが、国のために何かしたい」という強い思いがある。この思いはまじめで、元気で、明るくて積極的な「愛国の鑑」であるのぶの性格によくマッチするもの。だからこそ、朝田家のほとんどは快く活動に参加していく。

 実際に存在していた「婦人会」は、当時の様子をよく表すものであり、近年の朝ドラにもたびたび登場する。ただし、そこに属する婦人たちのキャラクターはかなり強烈だ。昭和の時代に人々の心に寄り添う数々の曲を生み出した作曲家・古関裕而の半生をモデルとした物語の『エール』(2020年度前期)では、大日本帝国婦人会の班長・佐々木克子(峯村リエ)が登場。主人公・裕一(窪田正孝)の妻・音(二階堂ふみ)は大日本帝国婦人会の会合に積極的に参加していなかった。克子はそのことで軍人の妻だった音の姉・吟(松井玲奈)を激しく叱責した。その後、音は吟に連れられ会合に参加し、音楽挺身隊として軍需工場で慰問を行うが、音はこのような“後方支援”には最後まで乗り気になれなかったようである。

 戦時中は地方で慰問公演を行っていたスズ子(趣里)やりつ子(菊地凛子)の姿が描かれた『ブギウギ』(2023年度後期)では、「国防婦人会」の女性たちが派手な装いで登場するりつ子に反発。彼女たちは自主的に贅沢を禁止しており、取り締まりをしていた。当然、自分が信じた道を突き進むタイプのりつ子がこれに屈することはなく、「これは私の戦闘服です。丸腰では戦えません」とキッパリ返すのであった。

 そして、『虎に翼』(2024年度前期)では寅子(伊藤沙莉)の親友で義姉でもあった花江(森田望智)が「婦人会」に参加する。花江の夫・直道(上川周作)は出征しており、きっと花江も「自分も何かしたい」という思いが高まったのだろう。一方で、自分の夫・優三(仲野太賀)も出征していたにも関わらず、寅子は「婦人会」には参加しなかった。この寅子と花江の違いが、より寅子のその時代における“異質さ”を物語るものとなっていた。

 このように朝ドラでは、やや行きすぎた行動をする「婦人会」に対して、特にメインキャストの女性が反発するという姿が描かれてきた。しかし、『あんぱん』のヒロイン・のぶは婦人たちと積極的に関わっていく。実は「婦人会」は、若くして結婚し、嫁いだ家で家事・育児に追われていた女性たちに、仲間とともに社会のために何事かを成し遂げる機会を与えることにつながっており、活動自体にやりがいを感じる女性も多くいたそう。ある種、「女性解放」的な側面を持っていたということだ。『あんぱん』では、歴代の朝ドラとは異なる、「婦人会」の別の一面を描いているのかもしれない。

久保田ひかる



Source link