【AFP=時事】ドナルド・トランプ米大統領(78)は今週、記者から「TACO」について質問された際、いら立ちを隠そうともしなかった。「TACO」とは、「Trump Always Chickens Out(トランプはいつもチキって〈おじけづいて〉退く)」の略語で、ウォール街のトレーダーの間で広まっている。
いわゆる「TACO理論」は、英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)のロバート・アームストロング記者が、政策が市場を混乱させ始めると撤回するというトランプ氏の傾向を強調するために考案したものだ。
トランプ政権は「市場や経済からの圧力に対する耐性があまり強くなく、関税が痛みを生じさせるとすぐに引き下がる」ことに投資家たちが気付き始めていると、アームストロング氏は結論づけた。「これがTACO理論だ。トランプはいつもチキって退く」。
アームストロング氏がTACO理論を考案したのは、今月、トランプ氏が世界中に課していた巨額の「相互関税」を一時停止すると発表したのを受けて株価が急騰した直後のことだった。
さらに、トランプ氏は先週にも、6月1日から欧州連合(EU)からの輸入品に50%の関税を課すと発表したが、その2日後には発動を7月9日まで延期した。
■「これは交渉というものだ」
トランプ氏の朝令暮改の根底にあるのは、1980年代にニューヨークでやり手の不動産デベロッパー兼大物実業家として磨き上げた、市場取引の浮き沈みに対する鋭敏さだ。
第1次政権時には、ウォール街での鋭い反応が、トランプ氏の考えを変える唯一の方法となることもあった。
「TACO理論」はFTのコラムを超えて急速に拡散し、投資家の間では単なる皮肉以上のものとして捉えられるようになったとアナリストらは指摘する。
「TACO取引戦略が再び注目を集める」と、デンマークの投資銀行サクソバンクのマクロ経済戦略責任者、ジョン・ハーディ氏は26日に配信したポッドキャスト番組の見出しで使った。