「貯金2000万円が数年で消えた…」75歳男性が医療費で老後資金を失ったワケ


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● 2000万円以上の貯金、持ち家あり 72歳まで働き続けても医療費に困窮

 「歳を取るとともに医療費が増加する」という高齢者の話は聞いたことがあると思います。しかし、具体的にどこまで深刻なのかをイメージしている人は少ないのではないでしょうか。実は、思いがけない費用が掛かり、それによって、中には破綻する人もいるほどです。

 2000万円以上の貯金もあり、持ち家で、定年後も72歳まで働き続けた大竹健太郎さん(75歳・仮名)もそうでした。

 「定年後も仕事を続けるため、知人のベンチャー企業に資本金1000万円を預けることを条件に取締役にしてもらった。若手の役員や人事部のご機嫌をとるため毎回のように食事もご馳走してるから、最近は貯金できてない」とため息を漏らします。

 健康診断は定期的に受けて、1回だけですがPET検診も受けていたので、病気になるとは思っていなかったのです。ところが、がんが発覚。マネープラン、もちろんライフプランも変更になりました。大竹さんはどんな対策で乗り切ったのでしょうか。

 大竹さんは、現金2000万円だけは貯金していました。厚生年金は月13万円、企業年金は月5万円(65歳から10年間)もらっています。毎月の支出について、食費や旅行費用などまで慎重に計算して、このくらいの預金があるなら十分だと高をくくっていたそうです。

 すでに家のローンも完済していたので、毎月厚生年金と企業年金の合計18万円の収入があれば十分と考えるのは当然でしょう。75歳からは、企業年金がなくなり13万円になりますが、それでも、いざというときには貯金の2000万円があるので老人ホームにも入居できます。

 一方で、大竹さんは毎月の医療費が想定外に高くなるとは思ってもおらず、予算に入れていませんでした。

 総務省の家計調査(2024年)によると、2人以上の世帯では、「保健医療サービス」の支出は平均で年間10万4285円です。

 そのうち、病院で治療を受けた場合の「医療費」を年代別にみると、29歳以下は2万9744円、30代は3万4259円、40代では3万232円です。

 健康な人は、風邪をひいたり、花粉症くらいでしか病院に行かないかもしれません。ところが、50代は3万9936円と増え、60代は5万7468円まで増えます。

 レントゲンやCTなどの検査が増えたり、歯医者に通院したりすることが増えると、次第に支出が増加します。

 ありがたいことに、75歳になると後期高齢者医療制度が適用されるため、実費が減り、70歳以上は5万6108円になります。しかし、国は慢性的な財政不足。この医療保険制度は将来的にはあてになりません。窓口で払う自己負担の割合を引き上げることの検討も進められていて、今後は医療費が増える懸念があるのです。

 さらに、高度医療費控除も将来的には、条件が厳しくなることが考えられます。

 65歳以上74歳以下で一定の障がいがある場合以外は、75歳までは、国民健康保険などに切り替えて、毎月の保険料を払わなければなりません。年金生活の人には、この金額は負担が大きいでしょう。



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