【ソウル】3日に行われた韓国大統領選挙で、左派系最大野党「共に民主党」の李在明前代表(60)が当選し、4日に第21代大統領に就任した。3年ぶりの政権交代となり、保守から左派へと舵が切られた。李新大統領は就任演説で、深刻化する韓国社会の「分断克服」を最重要課題として掲げると共に、外交においては「日米韓協力」の推進を強調した。任期は5年となる。
国会で就任式、分断克服への決意
李在明大統領は4日午前、国会議事堂で行われた就任式に臨んだ。「限りない責任感と感謝をもって、大統領としての第一歩を踏み出す」と述べ、国民間の根深い分断に触れ、「全ての国民に奉仕する大統領となる」と誓った。
2025年6月4日、韓国国会議事堂で行われた就任式にて宣誓する李在明新大統領
異例の補欠選挙、前政権への批判も
今回の大統領選挙は、前任の尹錫悦大統領の罷免に伴う補欠選挙として実施され、通常の任期満了に伴う選挙とは異なり、政権引き継ぎ期間が設けられなかった。このため、李大統領の任期は選挙結果確定直後の4日朝に開始された。李大統領は就任演説の中で、尹前大統領による戒厳令の宣布を「国民主権を奪う内乱」と厳しく非難し、「真相究明により責任を追及する」との姿勢を示した。
詳細な開票結果と高い投票率
中央選挙管理委員会が4日朝に発表した最終集計によると、李在明氏の得票率は49.42%だった。対立候補であった保守系与党「国民の力」の金文洙前雇用労働相(73)は41.15%、保守系野党「改革新党」の李俊錫議員(40)は8.34%の得票にとどまった。投票率は79.4%を記録し、前回2022年の77.1%を上回る関心の高さを示した。
過去の韓国大統領選挙における主要候補者らの得票率を比較するグラフ
大統領としての業務開始
李大統領は就任初日の4日朝から、韓国軍のトップから軍の態勢に関する報告を受けるなど、即座に大統領としての業務を開始した。国会での就任宣誓は、事前の準備期間がないことから、簡略化された形で行われた。
外交方針:実用主義と日米韓協力
就任演説において、李大統領は外交政策の柱として「国益中心の実用外交」を掲げ、危機を国益最大化の機会に変える姿勢を強調した。「韓米同盟を基盤とし、韓米日協力を強化する」と述べ、前政権の外交路線を基本的に踏襲する考えを表明した。その一方で、中国やロシアといった周辺国との関係についても「国益と実用の観点からアプローチする」とし、関係改善の意欲もにじませた。さらに、北朝鮮との対話を通じた朝鮮半島の平和構築にも言及した。
韓国国会で就任式に出席する李在明新大統領(写真右)
新時代の幕開け、山積する課題
李在明新大統領の就任により、韓国は新たな政治局面に突入した。深刻な社会分断の解消、経済課題への対応に加え、複雑な朝鮮半島情勢や主要国との外交関係構築など、その前途には多くの課題が山積している。新政権がこれらの課題にどう向き合っていくか、国内外から注目が集まっている。