YouTubeなどの動画サイトでアップロードされている芸舞妓(げいまいこ)の動画を巡って、花街・京都祇園が揺れている。2年ほど前から、芸舞妓につきまとい行為などをして撮影した動画で収益をあげる“文化搾取ビジネス”を行うYouTuberが相次いで登場しているというのだ──。【前後編の後編。前編から読む】
京都祇園にあるお茶屋の常連男性Aさんが語る。
「公道を歩く芸舞妓さんを待ち伏せて、跡をつけて撮影し続けるなどしているんですよ……。お茶屋の常連のあいだでは有名な話で、当該のYouTubeチャンネルも特定され、撮影者の一部が外国人であることも判明しているようですが、侵入や撮影が禁止されている場所として指定されていないメイン通り(花見小路)や、個々人のマナーに委ねられている公道では対策するのも難しいようです」(Aさん)
数多くの芸妓・舞妓が所属している祇園甲部は、こうした問題を把握しているのか。担当者に話を聞いた。
「祇園甲部として、YouTuberグループやチャンネルの特定に至っているわけではありませんが、そうした事例があることは把握しており、芸舞妓さんからの被害報告も受けております。収益を目的とした無断撮影やアップロードをコンスタントにされることで、模倣される方が増加し、より迷惑行為を伴う撮影をされる方が増えていくことは懸念しているところであります」(祇園甲部・担当者)
YouTubeへの違反申請も「限界がある」
祇園甲部の事務局では、稽古場に来た芸舞妓を対象に、無断撮影による被害について聞き取り調査を行ったという。その結果、京都祇園で起きていることの詳細が見えてきた。
聞き取り調査では、『雨の日に傘の下からスマホを差し込まれて撮影される』『信号待ちを狙って、至近距離で長尺の撮影をされる』といった事例の詳細が明らかになったほか、無断撮影行為を巡って『車道に出て撮影される方がいる。もしそういう人が車と接触した場合、まわりまわって芸舞妓のことを悪く言われるかもしれないと不安』『進路を妨害する観光客を払いのける仕草をアップされて物議を醸した』『撮られている最中は嫌な顔もできない』といった声も寄せられたようだ。
これらの声は、日本在住のYouTuberによる無断撮影行為のほか、外国人観光客をはじめとしたいわゆる“舞妓パパラッチ”による被害も含まれているとのことだが、担当者によると「フィルムカメラの時代と違い、写真や動画をSNSなどへ気軽にアップロードできる環境が整っている現代では、撮影行為を巡る問題は複雑化している」とのこと。
前出・常連客Aさんによると「問い合わせによって無断撮影やアップロードが認められたアカウントが停止された例もあります。しかし、当該のYouTuberグループは複数アカウントを取得しており、1つチャンネルが削除されても別のアカウントで収益化している仕組みになっているようで、完全にイタチごっこと化している」という。
祇園甲部の担当者も「肖像権侵害を申告する場合は、基本的に被写体となっている本人が身分を明かす必要がある。それを芸舞妓さん本人にさせるにも限界があるのが実状です」と苦渋のコメントを寄せた。