財務省の審議会で、大学の授業内容が議論の的となった。「義務教育レベル」とされる基礎内容を大学で教えることに対し、財政支援のあり方も含めて問題視されたのだ。数学教育に長年携わる芳沢光雄氏は、単に学生の「学力不足」が原因ではないと指摘する。
財務省が問題視した「義務教育レベル」の授業
4月15日に開催された財務省の財政制度分科会で、一部私立大学の授業内容が焦点となった。報道によると、数学における四則演算、割合、約数・倍数、方程式・不等式といった高校までに学ぶべき基礎事項を大学で教えている現状が、「義務教育のようだ」として議論されたという。その背景には私学助成の見直し論があり、多くの識者は学生の「低学力」がこの状況を生んでいるとの共通認識を持っているようだ。
大学の教室または研究室らしき場所で積み重ねられた書籍や資料。日本の教育問題、大学の基礎学力低下に関する議論を象徴。
数学教育の専門家が見た現状
本稿筆者である芳沢光雄氏は、大学教員として45年間、約1万5000人の学生に数学を教えてきた経験を持つ。文系・理系双方の学生を指導し、また小中高校での出前授業を通じて、子どもたちの算数・数学への興味を育む活動も行ってきた。このような長年の経験から、芳沢氏は大学で基礎的な内容を学ぶ学生たちを、単純な「学力不足」ではなく、「教育の犠牲者」であると捉えるべきだという独自の視点を示す。
筆者の経験と「数の基礎理解」の授業
芳沢氏が長年担当し、定年まで続けた桜美林大学の「数の基礎理解」という授業は、まさに財務省が問題視した四則計算、割合、約数・倍数、方程式・不等式といった内容を扱っていた。この授業は、拙著『昔は解けたのに……大人のための算数力講義』にも詳細が収められており、まさに「算数+α」と呼べるレベルである。最近、この自身の授業内容についても、今回の財務省の議論に関連して問い合わせが寄せられているという。これは、大学における基礎教育の必要性が、広く問われている現状を物語っている。
まとめ
財務省が提起した大学の授業内容に関する議論は、学生の基礎学力低下だけではない複雑な教育問題を示唆。芳沢氏の経験に基づく見解は、義務教育レベルの内容を大学で学ぶ学生たちが、教育システムの犠牲になっている可能性を示唆し、問題への多角的なアプローチの重要性を浮き彫りにする。
参照元
https://news.yahoo.co.jp/articles/12c0a142abd3b34b6705d6c6cc7d32d093e6cddb