NHK「首都圏ネットワーク」絶滅危惧種キノコ研究報道 アナ発言に波紋広がる

NHKの情報番組「首都圏ネットワーク」が2025年6月9日の放送で、絶滅の危機に瀕しているキノコの研究成果を取り上げました。番組内でキャスターを務めるアナウンサーの発言が、視聴者やSNSユーザーの間で「無神経だ」「失礼にあたる」として波紋を広げています。この出来事は、絶滅危惧種の保全研究とその社会的な受け止め方について、改めて議論を呼んでいます。

NHK「首都圏ネットワーク」放送中のスタジオ映像。キャスターの一橋アナウンサーと安藤アナウンサーが映っている。NHK「首都圏ネットワーク」放送中のスタジオ映像。キャスターの一橋アナウンサーと安藤アナウンサーが映っている。

絶滅危惧種キノコ「キリノミタケ」の人工栽培成功

9日の放送回では、群馬県桐生市にあるキノコ開発・保全活動を行う企業と研究機関の取り組みが紹介されました。森林伐採などの影響で、現在110種類ものキノコが生息の危機に瀕しているという背景が伝えられました。一般財団法人・日本きのこ研究所への取材では、環境省レッドリスト2020で絶滅危惧II類(VU)に分類されているキノコ「キリノミタケ」の人工栽培に成功したことが詳しく報じられました。

キリノミタケは桐の実に似た独特の形状を持ち、成熟すると裂けて胞子を煙のように飛ばす特徴があります。海外では「悪魔の葉巻」とも呼ばれ、これまでに人工栽培の成功例はなかった非常に珍しい種です。日本きのこ研究所の所長らは、15年前にキリノミタケの研究を開始。5種類の原木を使った栽培を試み、菌の特徴から発生には長い年月が必要であることを突き止めました。生育環境を整えながら、実に7年もの歳月をかけて、ついに人工栽培の成功に至ったのです。所長は当時の喜びを「すごいですね!と思わず叫んでしまいました」と振り返り、顧問は「多様性保全の第1歩であり、非常に意義のあること」とコメントし、キノコの魅力発信の重要性を強調しました。番組のナレーションは、今回の知見が国内の研究機関と共有され、キノコの可能性を広げることに繋がると伝えました。

スタジオでのアナウンサーの発言が物議を醸す

VTRが終了し、スタジオに戻った番組キャスターの一橋忠之アナウンサーと安藤結衣アナウンサーは、研究の成果についてコメントしました。一橋アナウンサーは「7年って言ってましたよね」と研究期間の長さに驚きを示した一方、首を傾げながら笑顔を見せつつ、「食べられるのか何なのか、何の役に立つのか分かりませんけど……。やっぱり多様性が可能性というのは良い言葉でしたね」と感想を述べました。

これに対し、安藤アナウンサーは「そうですね、完成した時の(研究所の)2人の表情もすごく嬉しそうに話していらっしゃいましたもんね」と同調しつつ、「この人工栽培に成功したキリノミタケは、国立博物館に寄贈されて、貴重な資料になっているということ」と、その学術的価値について補足しました。一橋アナウンサーの「何の役に立つのか分かりませんけど」という発言の真意は不明ですが、放送後、この発言はX(旧Twitter)を中心に急速に拡散され、多くの批判的な声が上がりました。

SNS上での批判と波紋

SNS上では、一橋アナウンサーの発言に対して「研究者に対して失礼すぎる」「絶滅危惧種の増殖法の確立は生物多様性への貢献であり、非常に大きな功績ではないか」「科学的な発見は、すぐに実用的な『役に立つ』形にならなくても長期的に見て人類の役に立つことが多い」「他者へのリスペクトや想像力が足りない」「たとえ個人的にそう思ったとしても、公共放送のアナウンサーとして口に出すべきではない」といった、厳しい意見が多く投稿され、大きな波紋を呼んでいます。研究に長年を費やした専門家への敬意を欠く発言として、多くの視聴者が不快感を示しました。

結論

NHK「首都圏ネットワーク」で報道された絶滅危惧種キノコ「キリノミタケ」の人工栽培成功は、生物多様性保全の観点からも、キノコ研究の分野においても、非常に重要な成果です。しかし、番組中のアナウンサーによる無神経とも取れる発言は、SNS上で大きな批判を招き、ニュースそのものの意義とは別の形で波紋を広げることとなりました。この騒動は、科学研究、特にすぐに商業的な「役に立つ」とは限らない分野の意義を、社会がどのように評価し伝えるべきか、そしてメディアにおける言葉の選び方について、改めて問いを投げかける出来事と言えます。

参考資料:
https://news.yahoo.co.jp/articles/c5c298ff8f653a9cd39cb961db762ea12387ddf7