インド西部アーメダバード発イギリス・ロンドン行きのエア・インディア機が墜落する事故が発生し、搭乗者242人のうち241人が犠牲となった。1人が生存していることが、13日にエア・インディアより発表された。当局によると、この事故機は地上の医療施設や医科大学の宿舎を直撃し、同日午後までに地上にいた少なくとも8人も死亡したことが確認されている。この悲劇的なエア・インディア機墜落事故は、インド国内だけでなく国際社会にも大きな衝撃を与えている。
事故の詳細と地上の被害
墜落したのはエア・インディアAI171便。現地時間12日午後1時39分にアーメダバード空港を離陸した。ロンドン・ガトウィック空港にはイギリス時間午後6時25分(日本時間13日午前2時25分)に到着予定だった。
離陸直後、同機は住宅地に墜落。特に医療施設や医科大学の宿舎に壊滅的な打撃を与えた。これにより、少なくとも50人の医学生が負傷し、病院へ搬送された。航空機が直接、人々が生活する施設を直撃したことで、被害は搭乗者に留まらず、地上にも拡大した。
地上の犠牲者
アーメダバードの保健当局は13日午後、BBCに対し、搭乗者の他に地上で少なくとも8人が事故により死亡したと明らかにした。このうち4人は、墜落した宿舎の一つに居住していた医学生だった。残る4人は、宿舎に住む他の学生の親族だったという。インド医学会連合は先に、学生5人が行方不明になっていると発表していた。
関係者の対応と搭乗情報
インドのナレンドラ・モディ首相は13日、事故現場を約20分間視察後、負傷者の治療にあたる市内の病院を訪問した。国のトップが迅速に現場に赴き、被害状況を確認し、負傷者を見舞う姿勢を示したことは、国民の動揺を和らげる狙いがあるとみられる。
インド航空当局DGCAによると、事故機には乗客230人、パイロット2人、客室乗務員10人が搭乗していた。乗客の内訳はインド人169人、イギリス人53人、ポルトガル人7人、カナダ人1人だった。多国籍の搭乗者が犠牲となった国際的な事故である。
唯一の生存者
唯一の生存者はイギリス人男性で、病院で治療を受けている。生存者のヴィシュワシュクマル・ラメシュ氏は、インド国営メディアDDニュースの取材に対し、自身の座席が宿舎に激突した側とは反対で、地面に近い場所だったと語った。彼は、「ドアが壊れて、小さな空間が開いたのが見えた」と説明し、「自分でベルトを外し、(機体にあいた)穴を脚でさらに押し広げて、そこから這い出した」と話した。九死に一生を得た彼の証言は、事故発生時の機内の混乱と、奇跡的な脱出劇を物語る。
搬送先の病院のベッドで取材に応じたラメシュ氏は、離陸から間もなく客室の明かりが「ちらつき始めた」と述べ、5〜10秒後には飛行機が「空中で動けなくなった」ように感じたと明かした。「明かりが緑と白に点滅し始め、突然建物に激突して爆発した」と、事故の瞬間を振り返った。彼の生々しい証言は、事故原因の特定に向けた重要な情報となる可能性がある。
調査と航空機の種類
インド民間航空省によると、墜落現場での救助活動は完了した。現在は原因究明のための本格的な調査段階に入っている。
事故機はボーイング787-8型機ドリームライナーで、同型機の墜落事故は2011年の導入以来これが初めてとなる。最新鋭機の墜落という事実は、航空業界や利用者にとって大きな関心事となっている。
ボーイング社は声明を発表し、インド航空事故調査局主導の調査への「協力準備がある」と表明。「我々はAI171便に関してエア・インディアと連絡を取り合っており、支援の用意がある。乗客、乗員、救助隊員、そして影響を受けた全ての方々に思いを寄せている」と述べた。機体メーカーとして、原因究明への協力姿勢を示している。
補償と規制当局の動き
エア・インディアの親会社であるタタ・グループは12日、墜落事故の犠牲者遺族に1000万ルピー(約1600万円)の義援金を支給すると発表した。これは、事故の規模と影響を鑑みた迅速な対応と言える。
一方、米運輸当局は12日の記者会見で、ボーイング787型機の運航停止検討は時期尚早との見解を示した。事故原因が判明するまで、性急な判断は避ける姿勢を示している。
米連邦航空局(FAA)のクリス・ロシュロー長官は、事故調査を支援するため「専門チーム」がインドへ向かっていると述べたが、「これは極めて予備的な対応だ」と強調した。「何らかのリスクに関する情報が入れば、そのリスクを直ちに軽減する」と付け加えた。安全に関わる情報があれば即座に対応する方針を示唆した。
ショーン・ダフィー米運輸長官も、安全に関する変更は「直ちに」実施されるとしつつも、「(専門チームが)現地で状況を確認する必要がある。(運航停止は)繰り返しになるが時期尚早だ」と述べた。米当局は慎重な姿勢を崩していない。
アメリカに加え、イギリスの調査官もインドへ派遣される予定。米国家運輸安全委員会(NTSB)はインド当局への支援を表明している。事故原因の究明には、国際的な協力が不可欠となる。
墜落現場の状況
エア・インディア機が墜落したのは、10の専門施設が集まる広大な医療キャンパス内だった。人通りの多い施設が直撃されたことが、地上での犠牲者や負傷者が多数発生した一因となった。
現地で取材するBBCのサチン・ピトヴァ記者によると、墜落から数時間経過しても、建物からは濃い煙が立ち上っていた。現場には乗客のパスポートが散乱していたという。事故の衝撃と火災の規模の大きさがうかがえる。
グジャラート州保健当局は、航空機がバイラムジー・ジージーボイ医科大学と市民病院の宿舎に直撃したことを明らかにした。特定の施設が直接的な被害を受けた。
「当該機は宿舎の食堂に直撃した後、跳ね返り、宿舎の一つに落下した」と、医科大学の学長はBBCに説明した。事故当時は昼食時で、多くの学生が食堂にいたという。最も多くの学生が集まる時間帯に直撃したことが、被害を拡大させた。
インド、アーメダバードのエア・インディア機墜落現場で建物に激突した機体の残骸
複数の画像からは、巨大な航空機の一部が宿舎に突き刺さる様子や、食堂のテーブルに食べ物や食器が残されたままになっている状況が確認できる。凄惨な事故現場の様子が伝わる。
「生徒の大半は逃げ出したが、建物で火災が発生し、非常に濃い煙が充満したため、10〜12人の学生が閉じ込められた」と学長は述べた。複数の学生が死亡した可能性があると付け加えた。火災と煙が、脱出経路を断った学生がいたことを示唆している。
現地当局によると、数十人の学生が病院へ搬送された。負傷した学生たちの手当が進められている。
目撃者の証言
地元の男性は、「大きな音が聞こえた。爆弾が爆発したような音だった」と、BBCのロクシー・ガジェカル記者に語った。「煙と炎が上がった」と男性は続け、「誰かが飛行機が落ちたと言っていた」。衝撃的な音と視覚的なインパクトは、目撃者の心に深く刻まれた。
「現場に行ったら、飛行機が燃えていて、そばに3人が倒れていた」。目撃者は、事故直後の凄惨な光景を目の当たりにしている。
別の男性は、「煙が見えたので、現場に走っていった。飛行機には近づけなかった。外に複数の遺体が散乱していた」と話した。「飛行機の翼が主要道路に突き出ていた。そこらじゅうに煙が充満していた」と状況を説明した。広範囲に及ぶ被害と、近づくことさえ困難な状況だったことがわかる。
警察による確認
BBCの取材に匿名で応じた警察関係者の1人は、墜落現場から全ての遺体が運び出されたと語った。そして、「1人か2人程度の幸運な人を除いて、全員が亡くなった」と付け加えた。搭乗者のほぼ全員が犠牲になったという悲劇的な事実を改めて示している。
「飛行機の搭乗者だけではない。航空機が墜落した病院は、医学生でいっぱいだった。大勢が死亡したと、我々は考えている」と、地上の犠牲者にも言及した。地上で生活していた人々にも多数の犠牲者が出たという認識が当局内にあることを示している。
このエア・インディア機墜落事故は、搭乗者だけでなく、地上施設にいた人々にも甚大な被害をもたらした。現在、事故原因の究明に向けた国際的な調査が進められている。
(c) BBC News
Source link: https://news.yahoo.co.jp/articles/b7d81e62f41e3d0f07d955706730b9f8cbc89f3c