6月4日、司会の宮根誠司氏(62)が務める情報番組『ミヤネ屋』(読売テレビ制作、日本テレビ系)で、女性アナウンサーが「おとといの放送のなかで、備蓄米をめぐるJA全農の対応について、出演者の発言に誤りがありました」と謝罪と訂正を行った。一体何があったのか。
『ミヤネ屋』は6月2日の放送で、小泉進次郎農水相(44)が備蓄米を放出したことについて、『“小泉米”各地で争奪戦』という内容で特集を組んだ。ゲストとして、過去に外務大臣などを務めた田中眞紀子氏(81)と政治ジャーナリストの田﨑史郎氏(74)が中継で出演し、スタジオには杉村太蔵氏などがいた。番組は「令和の米騒動を斬る」と銘打たれていた。
番組中、“小泉米”が迅速に市場に放出される一方、過去に失言で辞任した江藤拓前農水相が入札方式で放出した備蓄米の店頭に並ぶスピードが遅かった点について、田﨑氏は「江藤前大臣の備蓄米っていうのは95%を全農が買い占めているんですよ。そうすると流れないんですよ」と持論を展開した。
これに対し司会の宮根氏が「なんでJAが買うと流れないんですか」と質問。田﨑氏は「これはJAが売ってないんだと思います。卸業者に」と答えると、杉村氏から「集荷業者で止まるということですか?」と質問が飛んだ。すると田﨑氏は「(JAは)今でも20%くらいしか出していないんじゃないですか」と説明した。さらに宮根氏に突っ込まれると、田﨑氏は「それはできるだけコメを高く売りたいという思惑で、市場に渇望感を作りながら流しているんじゃないかと思うんですよ」と自身の見解を述べた。
『ミヤネ屋』で備蓄米に関する発言を訂正謝罪する出演者たち。司会は宮根誠司氏。
JA全農からの即時抗議と事実無根の発言判明
田﨑氏の一連の発言に対し、テレビ局側にはすぐにクレームの電話が入ったという。読売テレビ関係者によると、JA全農の広報から「田﨑氏の発言が全く事実と異なるから今すぐ訂正して!」という強い抗議の電話があったとのこと。
テレビ局が電話の内容を受けて事実関係を裏取りしたところ、田﨑氏の発言がほとんど憶測に基づいたものであることが判明したため、2日後に訂正放送を行う運びとなったという。同関係者は、「ある程度は即興でクロストークするので、根拠もなく適当に話された場合、防ぎようがない。やはりコメの専門家を呼ぶべきでした。キャスティングミスと言ってもいいでしょうね」と話している。
明らかになった発言の誤りと訂正内容
訂正された内容は多岐にわたる。田﨑氏が主張した「JAが95%買い占め」は、事実としては「一般競争入札に参加し落札」したに過ぎなかった。「コメが流れていない」という発言も、「落札した全てが既に販売契約済」であることが判明。さらに、「20%くらいしか出していない」という発言に対しては、「合計64%が出荷済み」という訂正が行われた。また、「高く売りたいという思惑」については、「必要経費分だけ上乗せしている」のであり、利益目的ではないと訂正された。
本サイトが読売テレビに対し、田﨑氏の発言を巡ってJA全農から抗議があったかどうかの事実確認を求めたが、「番組の制作過程についてはお答えしておりません」という回答だった。
JA全農を取り巻く現状と報道姿勢
あるテレビ局の報道記者によると、「JAはジャーナリストや一部マスコミによって悪者扱いされる傾向がありますが、備蓄米の流通においては60kgあたり1050円しか上乗せしていません。これは5kgに換算すると87円程度に過ぎず、利益などほとんどあるわけがないのです。JAが中抜きしているとか儲けようとしているというのは筋違いの批判です」と指摘する。
農林水産省の調査でも、全国のJAの8割は農業関連事業が赤字であることが明らかになっている。“本業”である農業関連で収益を上げられず、貯金の運用や共済の販売で赤字を補填しているのが実情だという。
小泉大臣が「JAを改革し解体しようとしているのではないか」という噂まで流れる中、JA側もイメージ払拭に躍起になっているのは間違いないだろうと同記者は語る。報道番組であったとしても、必ずしも事実だけが語られているとは限らない。根拠もなく思い込みで発言するコメンテーターについては、その資質が問われても仕方がないと言えるだろう。