訪日客の困り事「英語通じない」増加:現場で見たコミュニケーションの壁

観光庁が2024年6月に公表した訪日外国人旅行者の受入環境調査によると、訪日客が困ったこととして「ごみ箱の少なさ」(30.1%)に次いで多かったのが「施設等のスタッフとのコミュニケーション(英語が通じない等)」(22.5%)でした。特に後者の「英語が通じない」問題は、前回の2019年度調査から5%ポイント以上増加しており、その深刻さがうかがえます。ネットニュース編集者の中川淳一郎氏が、自身が遭遇した訪日外国人の困り事を通じて、この調査結果が示す現実をレポートします。

観光庁調査が示す現実

観光庁の最新調査結果は、日本を訪れる多くの外国人観光客が、依然として基本的なインフラやコミュニケーションの障壁に直面している現状を浮き彫りにしています。特に、施設や交通機関のスタッフと円滑に意思疎通ができない点が、旅行中の大きなストレス要因となっていることが示されています。増加傾向にあるこの問題は、日本の観光立国としての課題の一つと言えます。

現場で遭遇した「言葉の壁」

中川氏は出張で東京を訪れた際、交通機関で困っている外国人旅行者に遭遇する機会がありました。彼らが直面していた困難は、観光庁の調査結果を裏付けるものでした。

羽田から成田へ:電子マネーと交通ルートの混乱

一人のアメリカ人女性は、羽田空港から成田空港への移動に困っていました。彼女は普段日本で使っている電子マネーでバスのチケットを購入しようとしましたが、それができず途方に暮れていました。成田空港行きの直行バスの時刻は過ぎており、カウンターの担当者との会話もスムーズに進んでいない様子で、明らかなフラストレーションを感じていました。中川氏は代替ルートとして、京急線で品川方面へ向かい、途中から成田空港行きの快速特急に乗る方法を伝えました。しかし、なぜか彼女はモノレールの窓口へ行き、スマホを操作していました。浜松町経由で大門乗り換えという選択肢もありましたが、京急が最も分かりやすいルートの一つです。

訪日外国人観光客が日本の複雑な施設案内や交通標識を理解するのに苦労している様子訪日外国人観光客が日本の複雑な施設案内や交通標識を理解するのに苦労している様子

スタッフよりAC/DC Tシャツの男?

興味深いのは、その女性が目の前にいるバスやモノレールのカウンター担当者ではなく、たまたま近くにいたAC/DCのTシャツを着た中川氏に助けを求めた点です。これは、公式な窓口のスタッフとのコミュニケーションよりも、通りすがりの「英語が通じそうな人」に頼らざるを得ない現実を示唆しています。別の機会にも、同様に交通機関で困っている外国人旅行者に遭遇し、助けた経験があるといいます。

調査結果と現場体験の一致

これらの現場での体験は、観光庁の調査で多くの訪日外国人が「施設等のスタッフとのコミュニケーション」に困っているという結果と完全に一致しています。多言語対応が進んでいるとされる中でも、実際の現場レベルでの柔軟な対応や、基本的な英会話能力の不足が、依然として外国人旅行者にとって大きな障壁となっている現状が浮き彫りになりました。調査データは単なる統計ではなく、日々の現場で実際に多くの旅行者が経験している具体的な困難に基づいていることが分かります。

現場のスタッフが、外国人旅行者の多様なニーズや予期せぬトラブル(電子マネーの問題、乗り換え案内など)に対して、言葉の壁を越えて適切に対応することの重要性が改めて示されたと言えるでしょう。

Source link: https://news.yahoo.co.jp/articles/2926ce4ccb44af10ffb61da43c2405fb96bb0ccc