米ミシガン州女子刑務所、受刑者の裸体をボディカメラで撮影・録画か…数百人が提訴

<女子刑務所の受刑者たちが本誌の独占取材に語ったのは、全裸検査やシャワー、さらには出産の様子をボディカメラで撮影され、録画されるという苦痛に満ちた経験だった>

米ミシガン州の女子刑務所で、全裸検査中の様子が刑務官のボディカメラに記録されていたという問題が浮上し、複数の受刑者が本誌の独占インタビューに応じた。被害を訴える女性たちは、心身に深刻な影響があり、「恐怖」「怒り」「人間以下と扱われた感覚」を今も抱えていると語った。

問題の概要と訴訟の詳細

証言したのは、ミシガン州イプシランティにある州内唯一の女子刑務所「ヒューロンバレー女子矯正施設(WHV)」に収容されている6人の女性だ。彼女たちは、2025年1月以降に始まったとされる全裸での身体検査(ストリップサーチ)が、自身の精神にどのような傷を残したかを初めて明かした。

この刑務所には約1800人の女性受刑者が収容されているが、6月3日時点で675人ほどが、同州のグレッチェン・ホイットマー知事と州矯正局(MDOC)の職員らを相手取り、5億ドル(約780億円)の損害賠償を求めて訴訟を起こしている。彼女たちは、刑務官が拘留施設内で裸の女性をボディカメラで撮影していたと主張している。

女性受刑者のイメージ画像。刑務所内でのプライバシー侵害や精神的苦痛を示唆しています。女性受刑者のイメージ画像。刑務所内でのプライバシー侵害や精神的苦痛を示唆しています。

原告側代理人は、デトロイトを拠点とするFlood Lawの弁護士たちだ。彼らは、刑務官の行為はミシガン州法(MCL 750.539j)に違反する重罪であると同時に、憲法で認められた基本的な権利も侵害していると主張している。受刑者へのボディカメラによる撮影・録画は、彼らの尊厳を踏みにじる許されざる行為だとしている。

刑務所の方針とPREAとの関係

MDOCは今年3月24日に新たな方針を発表しており、そこには「職務上、ボディカメラを装着する職員は、この方針指令に記されたガイドラインを遵守しなければならない」と明記されている。この新方針は、全裸検査の際の録画を明確に禁止している。

しかし、受刑者たちが被害を訴えている当時の方針では録画は許可されており、この刑務所は全米で唯一、受刑者が裸になる状況でも意図的にカメラを作動させ続ける施設だったという。5週間以上にわたる強い反対運動を受け、方針の見直しが行われた経緯がある。

原告側弁護士によれば、刑務官らは現在、全裸検査時の録画こそやめたものの、出産、シャワーやトイレの巡回については、依然として録画を続けているという。これらの行為も、受刑者のプライバシーを著しく侵害するものだと指摘されている。

現在、全裸検査の様子を映像で記録する方針を定めているのは、全米でミシガン州のみとされる。訴訟を担当する弁護士らは、この方針が連邦法である「刑務所内性暴力撲滅法(PREA)」の精神に反していると主張する。

PREAには、「受刑者に対するあらゆる形態の性的虐待およびセクハラを排除するゼロ・トレランス(容認ゼロ)の原則」が明記されており、その中には「ボイユリズム(のぞき行為)」に関する具体的な文言も含まれている。具体的には、職務と無関係に「トイレ使用中の受刑者をのぞく」「臀部、性器、胸部の露出を強いる」「全裸または排泄中の受刑者の画像を撮影する」などが例示されており、これらはすべて明確に禁止されている行為だ。

PREAの政策文書には、「本局は受刑者に対する性的虐待および性的嫌がらせを一切容認しない」と強調されている一文が下線付きで記載されている。ミシガン州でのボディカメラによる撮影は、この連邦法の精神と明確に矛盾するものと見なされている。

なお、Newsweekがホイットマー州知事の事務所およびミシガン州矯正局に複数回問い合わせたが、いずれからも回答は得られなかった。州司法長官ダナ・ネッセル氏の広報担当者は、州の被告側に対する法的代理を担うに過ぎず、今回の訴訟に関するコメントは当事者に委ねるとして発言を控えた。

受刑者たちが語る苦痛と影響

「屈辱的かつ侮辱的」──受刑者たちが本誌の独占取材に語ったのは、ボディカメラによる撮影が彼女たちにもたらした深刻な精神的影響だった。

ロリ・トウル(58歳)は、第一級殺人の共謀罪で終身刑となり、22年間に渡って服役しているが、ボディカメラによる録画という経験は「これまでになかった」と語る。本誌に対して彼女は、「影響は即座に現れた」と述べ、男女両方の刑務官に対して多数の質問を投げかけ、この方針に対する不快感を率直に伝えたという。しかし、刑務官からは「これは警察署の方針であり、不満があるなら責任者に申し立てるように」と冷たく言い渡されたという。「最初に私をカメラの前で裸にした女性刑務官は、『あなたはまだマシな方。膣を広げさせて覗いたりしてないんだから』と言っていた』と、彼女は当時の衝撃を語った。

第一級殺人で終身刑に服しているタシエナ・コームス=ホルブルック(49歳)は、今年で服役26年目になる。彼女は、トイレ掃除から受刑者の指導、図書室勤務まで、刑務所内で行われる仕事はほとんどすべて経験してきたという。全裸検査の録画については以前から噂を耳にしていたが、今年1月にはついに自分の身にも起きた。

「もともとストリップサーチは問題の多い手続きだったが、録画が加わったことでさらに悪化した」と彼女は語る。「極めて屈辱的で、人間性を踏みにじる恐ろしいものだったのに、それを記録に残すことになり、さらにひどい行為となった」彼女は、録画が始まると聞かされた当日、家族と面会する予定があったが、キャンセルしたという。「全裸検査だけでも恐怖なのに、映像が残されると考えると、とても耐えられなかった」と、その時の心境を明かした。

同様の感情を抱いていたのが、ラトーヤ・ジョプリン(47歳)だ。彼女も第一級殺人で終身刑を受け、服役18年目を迎えている。そのうち17年間は受刑者の宗教支援担当者の役割を、また12年間は自殺願望のある受刑者を支援する役割を担ってきた。彼女は刑務所内のシャワー室で映像を始めて録画された時の経験について、「女性として、屈辱的で、辱められ、恥をかかされたと感じた」と語った。精神的・感情的なダメージは大きく、仕事への意欲も失ったという。「未知のことを恐れる」ようになり、自分や他の受刑者たちの映像が悪用されるのではないかと恐れる気持ちもあると、彼女は述べた。

パウラ・ベネット(35歳)は17年間の服役生活において、家族との面会を大切にしてきたが、今ではその利用をためらうようになった。最初にボディカメラによる録画の噂を耳にした時には、ただのデマだと思っていたという。しかし、ある面会の前日の検査で、「これは『受動的な録画』でしかなく、映像を見られるのは限られた人間だけだ」と言われ、録画されていることを知ったという。彼女は、その経験が如何に不快で精神的に負担であったかを訴えている。

結論

米ミシガン州の女子刑務所における受刑者へのボディカメラによる撮影・録画問題は、単なる規則違反にとどまらず、個人の尊厳、プライバシー、そして基本的な人権を深く侵害する行為である。受刑者たちの生々しい証言は、この慣行がいかに彼女たちの精神に深い傷を残し、恐怖や屈辱感を与えているかを浮き彫りにしている。進行中の大規模訴訟は、この問題の深刻さを物語っており、州当局の責任と今後の対応が問われている。この事件は、世界の収容施設における人権保護のあり方に改めて警鐘を鳴らすものである。

参照

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